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綾と千鶴子の再会

千鶴子の腕を掴んだのは芳子であった。

「千鶴ちゃん、そのくらいにしたらどうだ?」

千鶴子は手を降ろす。

「お兄様、ノックもしないで部屋に入って来ないでくれる?」

「千鶴ちゃんの大声が聞こえてきたから来たんだ。鈴花に何をした?」

「この娘が少し粗相を。」

「だからと言って怒鳴りつけるのは違うだろう?君とは話し合う必要がある。」

芳子は千鶴子のベッドの上に腰掛ける。

「いいわ、私もお兄様に話すことがある。鈴花は席を外して。」

鈴花がかしこまりましたと言って出ていく。部屋には芳子と千鶴子の2人だけが残された。

「千鶴ちゃん、僕は君が軍の上層部の人と会っているのは知ってるんだ。何があった?」

「鈴花から聞いたの?」

「綾ちゃんが教えてくれた。」

千鶴子は綾の名前を聞いて顔色を変える。

「何を言ってるの?綾は亡くなってるはずよ。冗談も大概にしてくれる?」


「冗談ではないわ。」


部屋の扉が開き敏麗が入ってきた。傍らには綾子がいたが芳子にも千鶴子にも見えていない。

「綾ちゃんが私に教えてくれたのよ。」

「綾が貴女に?何のために?」

「あら、貴女綾ちゃんなんか知らないと以前おっしゃっていなかったかしら?」

 ホテルのレストランで吉岡と千鶴子に出くわしたとき、敏麗は耳元で千鶴子に囁いた。 


「綾という少女に心当たりはありますか?彼女が貴女に話したいことがあるそうですわ。」


しかし千鶴子はそんな娘知らないとだけ答えて吉岡と去っていった。

「千鶴子さん、ここに今綾ちゃんがいるわ。」

「何言ってるのよ?私とお兄様、それから貴女だけよ。」


ガタッ


突然テーブルの上で花瓶が倒れる。綾が倒したのだ。

「何?」

「綾ちゃんよ。」

続いて紙とペンが独りでに動き紙の上に文字が記される。


「ちづこ ねえちゃん 」

「綾、綾なの?」

「そうだよ。やっと きづいてもらえた。」

再びペンが紙の上で文字を記す。

「千鶴子さん、綾ちゃんの前です。芳子様暗殺計画から手を引くと約束してもらえますね、綾ちゃんは貴女に手を汚してほしくないのです。」

「うふふ、安心して。私お兄様を殺そうだなんて思ってないわ。」

千鶴子は満面の笑みで答える。

「じゃあ君が吉岡さんと会っていたというのは?」

「嫌ね、吉岡さんの部下が子供の家庭教師を探していて私で良ければと名乗りを上げただけです。」


「そういう事だったのか。」

芳子は千鶴子の話に安堵すると疑って悪かったと言って敏麗と共に部屋を出る。

外には鈴花が待っていた。

「ご主人様先ほどはありがとうございました。」

「気にしなくていいよ。君も何かあったら僕に言って。」

鈴花はありがとうございますと一言お礼を言うと去っていく。


 敏麗は芳子の家の馬車で送ってもらうことになった。馬車に乗り込もうとした時

「敏麗ちゃん」

芳子に呼び止められ耳元で囁かれる。

千鶴子はその様子をベランダから見届けると部屋へと入り扉をしめる。

 ティポットからカップに紅茶を入れる千鶴子。

「お兄様、安心してね。貴女は殺さないわ。貴女のことはね。」

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