揺れる想い
「敏麗ちゃん、気付いたか。」
敏麗は気が付くとベッドの上にいた。傍らには田中と鈴花がいる。そして綾も宙に浮いている。
降霊は中止となった。芳子が千鶴子が自分の命を狙ってると知って発狂。これ以上降霊を続ければ危険と判断した敏麗は蝋燭を吹き消し自分の体の中にいる綾を追い出したのだ。
「芳子様はどうしてますか?」
「芳子なら客間で眠ってる。」
降霊が終わった後芳子も敏麗同様倒れてしまったのだ。千鶴子の裏切りがショックだったのだろう。
「芳子様大丈夫かしら?」
敏麗が起き上がろうとする。
「待て。芳子の所には俺が行く。お前は休んでろ。」
「私も行きます。」
鈴花も立ち上がる。
「鈴花、お前は敏麗といろ。」
「いえ、着いていきます。ご主人様と二人きりだと何するか分かりませんので。」
田中と鈴花は部屋を出る。
芳子が眠っているのは敏麗の部屋の隣の客間だ。
「入るぞ。」
田中はノックして部屋に入る。
「なんだ田中さんと鈴花か。」
芳子はベッドの上で憎まれ口を叩いている。
「なんだとは何だ?体は大丈夫か?」
「ああ、眠ったら楽になった。」
「芳子、千鶴子ちゃんの事どう思ってるんだ?」
「どうって千鶴ちゃんは僕の大事な奥さんだ。」
「じゃあ敏麗の事は。」
芳子は口を閉ざす。
「好きなのか?」
田中の問いかけが一瞬の沈黙を破る。
「最近のお前、敏麗といると笑ってる。あの娘といたいのか?」
「僕も分からないのです。千鶴ちゃんは常に僕だけを見てくれる。家に帰って千鶴ちゃんがいると安心する。だけど僕の心が敏麗ちゃんを追いかけているのも事実です。」
敏麗は霊力も使えて前世の記憶もある。自分の知らない世界を教えてくれる。それでいて自分の夢を理解してくれて中国人の少女達のための女子校を作ろうと奮闘してくれてる。
「だけど無茶をしすぎるところがある。だから守ってあげたいとも思う。僕は敏麗ちゃんともいたい。」
「だったらそう伝えたらどうだ?敏麗にも千鶴子ちゃんにも。」
「だけど」
芳子はあまり乗り気ではない。
「千鶴子ちゃんもしっかり話せば分かってくれるんじゃないか。」
「いや、僕が心配なのは千鶴ちゃんが軍の誰かと繋がっている事だ。もし本当なら軍の中に僕を良く思ってない人間もいる。もしかしたら千鶴ちゃんが脅されてるかもしれない。」
「そっちは俺がなんとかする。だからお前は千鶴子ちゃんと向き合え。」
「あの」
今まで黙っていた鈴花が口を開く。
「どうした?」
「田中中佐、私見てしまったのです。」
「見たって何をだ?」
「奥様が部屋に」
鈴花が千鶴子の部屋で見たものを話そうとした時
「ちょっと宜しいかしら?」
敏麗がやってきた。
「敏麗、大丈夫か?」
「ええ、わたくしは平気。綾が伝え忘れた事があるのよ。」
綾が芳子の机に向かい紙とペンを出す。鈴花と田中と芳子にはペンが1人でに動いてるようにしか見えないが。
綾が絵を描き終わると敏麗のところに持ってくる。
「これが千鶴子さんと会ってた人ね。」
紙には軍服姿の男の絵があった。




