敏麗のこだわり
「敏麗、彼に女学校の教科書の監修をお願いしたいんだ。」
麻の少女は敏麗の見間違えという事で片付けられ、田中は本題に入る。敏麗が芳子と鈴花が花夜叉の元に行ってる間、田中は教科書の監修、出版をしてくれる出版社を探していた。協力してもらえることになったのが北川の勤める出版社である。
「そうでしたか。ご協力感謝致します。」
芳子がお礼を述べるが隣で敏麗はむっとした表情を浮かべている。
「敏麗ちゃんも頭下げて。」
「待って下さい。芳子様。このような言い方大変失礼かもしれませんが、わたくし不安だわ。」
敏麗が作りたいのは女の子の教育の教科書である。歴史の教科書に載せる偉人は全て女性、国語や外国語の教科書に載せる話は全て女の子が好きなプリンセスの話にしたいという。
「男性に女の子が望むような物は作れるのかしら?」
「やはりそう思われてしまいますよね?」
北川は少女雑誌を鞄から取り出す。
「僕が担当しているのは少女雑誌の編集でしてね。どうぞお読み下さい。」
敏麗が本の頁を開く。
「可愛いわ!!」
敏麗が開いた頁には少女達の挿し絵があった。花束を抱いたエプロンドレスの少女、着物姿で向かい合う少女、他にも華族令嬢のすなっぷ写真や少女歌劇のすたぁの対談が掲載されていた。
「敏麗さん、僕達は世の女学生達の声を聞くために手紙やお便りも受け付けてます。彼女達が欲する物が分からなければ雑誌は作れませんから。僕達は彼女達と一緒に雑誌を作っていると言っても過言ではないでしょう。宜しければ我々に一任して頂けないでしょうか?」
「どうする敏麗?」
田中が敏麗に尋ねる。
「私は賛成です。」
鈴花が先に声を挙げる。
「こんな可愛い教科書があったら学校に行くのが楽しくなりそうです。私学校は行ったことはありませんが。」
「わたくしもあなた方にお願いしたいと思います。」
敏麗も鈴花に続いて答える。
「という訳です。お願い致します。」
田中が立ち上がり北川に一礼する。
「ねえ、この方ご主人様みたいですね。」
出版社と契約が成立したその夜鈴花が敏麗の部屋で先ほどの少女雑誌を読んでいる。鈴花が開いたのは少女歌劇のすたあの特集だ。軍服姿の男役の姿が目に写る。
「鈴花ちゃんは男装の女性がお好きなようね。芳子様とどちらがお好み?」
「ご主人様も悪い人ではありませんが、私にとって一番は如月様です。あの、私も女学校できたら入学してもいいですか?男装の如月様と踊りたいのです。」
敏麗が勿論よと答えようとしたその時
「敏麗ちゃん、ちょっといいか?」
ノックと共に芳子の声がする。
「敏麗さん、私出ます。」
鈴花が扉を開ける。
「どうぞ、ご主人様。」
鈴花は席を勧める。
「今お茶を持ってきます。」
鈴花はお湯を注ぎカップティパックとカップを並べる。
「敏麗ちゃん、一つ聞きたい。君が女に拘る理由って何だ?」
学校も女学校、ダンスの授業のパートナーも女性、歴史の教科書に載せたいのも全て女性。何もかもが女性なのだ。
「反対してるわけじゃないし、方向性が明確なのはいい事だ。だけど北川さんのように女の子が望む物を産み出せる男性もいるし、田中さんだって男だが僕達に協力してくれる。それに君は僕のような過去があった訳ではないだろう。」
芳子の言う事は正しい。田中の協力の動機は不純だが北川のような男性は女性の味方だ。
「芳子様、わたくしどうしても納得ができないのです。女の子達の場所が奪われるのは。」




