鈴花の初めての日本
鈴花ちゃんメインです。
翌日。
芳子達は敏麗の日舞の師匠に会いに行くことになった。彼女は敏麗が幼い頃天津に住んでいた。しかし数年で日本に帰国。彼女は今は日本の兵庫県にある宝塚少女歌劇団で指導している。
「それで今日は劇場まで行くのか?」
「いえ、今日は先生のご自宅までお伺いする予定です。」
今日は劇場は休演日のため会ってもらえることになった。
「鈴花、嬉しそうね。」
馬車の窓から景色を眺める鈴花に敏麗が声をかける。
「ええ、だって日本の風景はまるで大陸とは大違いなのですもの。」
窓から見えるのは時計塔に百貨店、教会と西洋建築の建物ばかりだ。
「良かったわ。鈴花が元気になって。」
鈴花ね表情が穏やかになったのは始めて見る近代化した日本の風景に感動してるからだけではなかった。
昨日敏麗が芳子の部屋に入っていくのを見た鈴花はドアに聞き耳を立て中での会話を伺っていた。中から聞こえてきたのは敏麗が芳子に日舞の恩師を紹介したいという話だけだった。
馬車は一軒の旧家に到着する。鈴花は最後に御者の手を支えられ降りる。
屋根は瓦造りの家で着物姿の女中達に一斉にお出迎えされる。鈴花が玄関に上がろうとした時
「待て。」
芳子が止める。
「日本では靴を脱いでから家へ上がるのだ。」
芳子はその場に腰かけると掃いていたブーツを脱ぎ二足共その場で向きを揃える。鈴花にとっては不思議な光景だった。中国で靴を脱ぐのは入浴と就寝の時だけなのだから。鈴花も見よう見真似でやってみる。敏麗が掃いていた白いハイヒールの隣に自分の靴を並べる。
「敏麗さんは日本に来たことがあるのですか?」
「いえ、初めてですわ。ですが日舞の時は靴を脱いでいたのできっと日本では室内では靴は履かないものかと思ったのよ。」
女中に案内され3人は居間へ通される。畳にテーブル、座布団が用意されている。
女中はこちらでお待ち下さいと言って部屋を出る。
「鈴花ちゃんも座りなさい。」
敏麗に勧められ隣の空いている座布団に腰を降ろす。芳子が玄関でしたように。
「鈴花ちゃん、その座り方は駄目よ。スカートなんだから。」
「でもご主人様だって先ほど玄関で。」
「芳子様はいいのです。鈴花ちゃんそれでは中の下着が見えてしまうわ。」
敏麗は鈴花に正座を教える。
「敏麗ちゃん、それにしてもよく正座なんて知ってるな。」
鈴花とは反対方向に座る芳子が敏麗に感心する。
「ええ、先生に教えてもらいましたから。」
その時
「敏麗様、花夜叉先生を連れて参りました。」
花夜叉とは敏麗の日舞の恩師の名だ。
女中の後ろには着物に打掛を羽織った美女の姿があった。




