ドレスの王女
「芳子様?!本当に芳子様なのですか?!」
敏麗と婉容の目の前にはフリルのピンクのドレスに黒いロングヘアの鬘をつけた芳子が立っていた。
「どこかの西洋の国の王女様が訪問にいらしたかと思いましたわ。」
婉容はドレス姿の芳子に感心する。
「皇后様、お言葉ですが僕も王女です。」
芳子ははっきりとした口調で返す。
「皇后様、このドレスって。」
敏麗は芳子のドレスに見覚えがあった。
「敏麗さん、よく分かったわね。」
婉容がデザインしたドレスは先ほどの絵本の令嬢のものをモチーフにしたのだ。令嬢が着ていたのは白であったが。
「わたくしの理想のプリンセスの姿。理想の女子校の制服ですわ。」
婉容が試着をお願いしたのは敏麗が作る女子校の制服なのだ。
ただ1つ違うのは胸元に白い蘭の花が付けられていた。
「蘭の花は満州国の花でしょ。だから付け加えてみたのよ。」
「それで皇后様、なぜ僕が試着しなきゃいけないんですか?それに他の色だってあったじゃないですか。」
芳子はまだピンクのドレスに納得が言っていないようだ。
「だってピンクが一番のお気に入りなのですもの。それに似合っているわ芳子。」
しかし芳子は機嫌を直してくれない。
「皇后様、芳子様はスカートがお嫌いなのです。」
敏麗がこっそりと教えてくれる。
「まあ、王女様なのに?」
「王女様だからスカートを履かなきゃいけないなんて誰が決めたんだ?」
芳子は婉容の向かいの席に足を大きく広げて座る。
「芳子。」
婉容が芳子の隣にやってくる。
「王女様がそんな座り方いけないわ。」
婉容は芳子の足を閉じる。
「芳子は女装がお嫌いのようね。わたくしに会いに来てくださった時も女装だったのに。」
「あれは任務です。」
「これも任務よ。」
その時
「失礼致します。」
「あら、吉岡中将。」
部屋に溥儀の側近吉岡がやってきた。
「皇后様、敏麗さんもご一緒で。そしてこちらの方は?」
吉岡はドレス姿の芳子に目をやる。
「吉岡中将、あなたご自身の部下の顔もお忘れで?」
婉容は芳子の鬘を外す。
「川島か?!仮装行列にでも参加するのか?」
「違います。新しく作る女子校の制服の試着です。」
芳子はムッとした表情で答える。
「女子校って敏麗さんの入れ知恵の」
「入れ知恵とは失礼ですわ。」
敏麗が立ち上がる。
「これは神のお告げ。新国家のための政策ですわ。ところで吉岡中将、皇后様に何のご用かしら?」
「皇帝がこちらに来ているものかと。」
吉岡は溥儀を探しているのだ。
「生憎ですが見ての通り皇帝陛下はおりません。お引き取りを。」
敏麗は吉岡を追い返してしまう。
「皇后様」
吉岡が出てくと寝室から女官達がやって来た。4着のドレスを手にして。




