皇后の理想
後半スタートです。
1932年7月半ば。
敏麗と芳子は皇帝と皇后の住む屋敷に招かれていた。
「ちょっと待て!!君達本気で行ってるのか?」
芳子は何かを拒んでいるようだ。
「はい、本気です。」
「女官達、早く芳子を捕まえて。」
婉容の指示で女官達は逃げ回る芳子を捕獲する。
「芳子様、これでもう逃げられませんわ。お覚悟をお決めになって。」
敏麗は芳子に詰め寄る。
「芳子、これは皇后命令よ、さあ芳子を寝室に連れて行って。」
芳子は女官達に両腕を捕まれ寝室に連れていかれる。
「少しやり過ぎたかしら?」
寝室に連行された芳子を見ながら敏麗は呟く。
「いいんじゃないかしら。強情な芳子にはこのくらいが調度いいわ。」
敏麗の隣で婉容が笑っている。
「でもなぜ芳子様に?皇后様でも宜しかったのでは?」
「うふふ、だって興味ない?普段男装の芳子がよ。」
ないといえば嘘になる。
「子供みたいに暴れる芳子も見れて一石二鳥だわ。」
婉容は嬉しそうだ。
「皇后様、最近よく笑いますね。」
女官の1人が婉容と敏麗に紅茶を持ってくる。
「敏麗さんが女子校を作るって提案してくださってからですよ。」
女官曰く婉容は紫禁城ではずっと部屋に籠り1人で過ごす日々を送っていた。しかし満州に移ってからは舞踏会やお茶会を開いて積極的に貴族や財閥の関係者と交流するようになった。
女子校の制服をデザインさせてほしいと言って来たのも婉容の方からだった。
「ご覧になって。敏麗さん」
婉容は本棚から一冊の絵本を取り出す。少女時代に読んでいた物でイギリス人の家庭教師からもらったものだ。
「ここ、わたくしの好きな頁よ。」
敏麗が開いたのはドレスの令嬢がメイドと庭でお花を摘む場面である。
「この挿し絵、わたくしのお気に入りなの。」
この場面は令嬢が戦いに出向いた王子様を待って庭のお花を摘んでいるという。
「お花は王子様へのプレゼントという事なのですね。」
「ええ、わたくしは敏麗さんの作る女子校がいつ王子様が迎えに来てもいいようにそのための準備をしておく場所になったらと思いますわ。このお庭のように。」
「皇后様、わたくしもそう思います。」
敏麗は婉容の話に頷く。
「皇后様、敏麗様。」
敏麗と婉容が話に夢中になっていると寝室から女官が現れた。芳子の着替えが済んだようだ。
「芳子様、こちらへ」
女官が芳子を呼ぶ。
「ちょっと、待ってくれ。」
寝室からは芳子の声がする。
「芳子様、これは皇后様の命令です。」
「分かったよ。出ていけばいいんだろう。」
芳子は観念したように女官に手を引かれながら寝室から姿を現す。




