日本軍の手柄
「旦那様!!」
客室の先客は千鶴子のかつての雇用主片岡だった。
「片岡社長、妹を働かせて下さり誠にありがとうございました。」
芳子は片岡が座る向かいの席に千鶴子を連れ座ると軍服の内ポケットの中から小切手を取り出す。
「ご希望の額をご記入下さい。妹のお礼と手切れ金です。」
「手切れ金?!どういう事ですか?」
「そのままの意味ですよ。上海に支社を作るための資金援助も辞退させて頂きます。」
「どういう事だ?!」
片岡は立ち上がり芳子の胸元を掴む。
「離れろ!!」
田中が片岡を芳子から離す。
「社長、言葉通りの意味ですよ。川島は私の大事な部下でしてね。彼女のたった一人の妹を売り飛ばすような方に援助はできませんよ。」
「お前達、何の話だ。」
部下が田中に一枚の封筒を渡す。田中は中から一枚の紙を取り出す。
「こちらはあなたの銀行口座の残高証明ですよ。不自然にも大金が振り込まれてますね。振込主も日付もバラバラ。」
「それがどうした?」
部下が再び田中に封筒を渡す。
「片岡社長、こちらをお読み下さい。」
田中が見せたのは剛真が片岡宛に書いて手紙だった。
「なんて書いてあります?」
片岡は口は開こうとらしない。
「でしたら川島に代わりに読んでもらいましょうか?」
手紙は芳子の手に渡る。
「どれどれ、 剛真様」
芳子が文面を読み上げる。そこには千鶴子を2000円で売ると書かれていた。
「どうぞ千鶴子は好きにしてください。だと?!僕の妹は道具じゃない!!」
芳子は立ち上がり片岡を睨み付ける。手紙は千鶴子が剛真の屋敷から逃げ出す際に持ち出したものだ。
千鶴子はその手紙を持って警察に行こうとしてたところを芳子が目撃した。
「社長、こんな茶番にこれ以上付き合う必要はありません。帰りましょう。」
「そうだな。」
剛真の提案を聞き入れ席を立とうとしたとき、
部下の1人が扉を開ける。
「動くな!!警察だ!!」
刑事がやってきて警察手帳を見せる。
「片岡さん、剛真さん、あなた方には人身売買の疑いがかかっています。署までご同行を願います。」
2人は捕らえられ連行されてしまう。田中も部下を連れ撤退する。
千鶴子はその様子を見届ける。
部屋には千鶴子と芳子だけが残された。
「川島さん、ありがとうございました。」
千鶴子は芳子に頭を下げる。
「千鶴ちゃん、その呼び方はやめてって言っただろう。」
「ですがそれは舞踏会での設定で全て解決しました。」
「千鶴ちゃん、僕の家族にならないか?」
「川島さん、今なんと?」
千鶴子は耳を疑う。
「僕の家族になってほしいんだ。君は英語も話せるみたいだし、気転も聞く娘だ。これからの僕の活動を支えてほしい。」
芳子は千鶴子を自分の膝の上に座らせると手を取り甲に口づける。




