芳子の気持ち
その夜巫女装束に着替えた敏麗は徐霊の道具を入れた鞄を手に鈴花の案内で日本軍が強奪した土地へと向かう。
「敏麗さん」
外は街灯一つなち真っ暗闇の中鈴花が持つランプの灯りだけが頼りだ。
「はぐれないように着いて来て下さいね。」
その時
「敏麗、鈴花!!」
暗闇の中低い男の声に呼び止められる。
「いや!!」
鈴花は大声で悲鳴をあげ敏麗にしがみつく。
「騒ぐな!!俺だ。」
鈴花は声のする方を灯りで照らす。
「なんだ、田中中佐でしたか。」
声の正体は田中だった。
「なんだとはなんだ。お前らどこ行く気だ?」
「どこって霊視ですわ。」
「こんな夜中にか?」
「夜中だからですわ。ああいった類いのものは午前2:00以降が一番活発になりやすいのですわ。」
「俺も着いてく。こんな夜中に女の子だけじゃ危ないだろう。」
「田中中佐がわたくしのこと女の子扱いしてくださるなんて。明日は雪でも降るんじゃないかしら。」
「お前らに何かあったら芳子が心配するだろう。」
先ほどから田中は芳子の名前ばかり口にしてる。
「芳子様に関係を迫ろうとして今度は芳子のためとか。どういう風の吹き回しかしら?」
「おい敏麗!!」
2人のすぐ前には鈴花が灯りを持って歩いている。
「子供が聞いてる前だ。」
「そうでしたわね。」
「実を言うと」
田中は先ほどよりも小声で話し始める。
「俺は純粋に芳子を愛していた。最初は同意の上だった。だけど芳子は過去のトラウマで男である俺を受け入れてはくれなかった。その後すぐだ。千鶴子ちゃんと婚約したのは。だけど最近は千鶴子ちゃんよりもお前といる方が笑っている時が多い。もしかしたらお前に心写りしてるかもな。俺は芳子が幸せならどちらでもいいが。」
敏麗は話を聞いて頬を赤くする。暗闇で誰にも見られていないのが幸いだ。
「まあ、田中中佐って男らしいとこあるのですね。」
「惚れ直したか?」
田中は冗談を言うように尋ねてくる。
「いえ、わたくし他に当てがありますので。」
「敏麗さん、田中中佐。」
目の前を歩いていた鈴花が声をかける。
「着きましたよ。」
敏麗達の目の前には畑が広がっていた。しめ縄がしてあったがほどかれた後がある。
「あの子供達の仕業ね。」
子供達が肝試しにでも来てるのだろうか。
「全くしょうがないやつらだな。」
田中が戻そうと縄に近づく。手元を照らす鈴花。
「田中中佐!!鈴花ちゃん!!離れて!!」
敏麗が2人目掛けて塩を投げる。
「なんだ?」
「下がって。危険だわ。」
敏麗は鈴を手に持ち畑へと入っていく。
ジャンジャンと鈴の音を鳴らす。




