鈴花の故郷
満州国が建国されて3カ月が経った頃
1932年6月。
ここは農村部の地域一台の馬車が停車する。降りてきたのは2人の令嬢である。1人目は紺色に白い丸襟のワンピースを着た少女。年は18才。
もう1人目はチャイナドレスの少女年は14才 。
「敏麗さん、こちらです。」
敏麗は少女に案内され少女がかつてお世話になった家へと向かう。
しかし道中敏麗は不思議なことに気付く。村人は女性か子供、それから老人で若い男が1人もいないのだ。
「ねえ、この村には男性はいらっしゃらないの?」
「男手は隣村に稼ぎに行ってしまったのです。」
かつては村人皆で畑を耕して生活していたが日本軍に土地を奪われそれ以来男が隣街に出稼ぎに行き、女が森に入り食料を取りに行く。そんな生活をしているという。村長の庭の畑では野菜も育てて村人にも分け与えてるが村人全員に行き届くのは難しいと言っている。
「村長さんただいま!!」
村長の家に6人くらい子供達がやって来た。
「鈴花姉ちゃん!!」
子供達が鈴花に気づく。
「村長さん!!鈴花姉ちゃんが帰って来たよ!!」
子供達が大声で叫ぶ。中からは中年の男が現れた。敏麗の師である奏よりも少し上くらいだろう。
「鈴花か?!」
「はい」
「帰って来たんだな、良かった。あの貴女が鈴花を見つけて下さったのですね、ありがとうございます。」
村長は敏麗に頭を下げる。
「村長さん、違うんです。私今、日本軍の人のお屋敷で働かせてもらってるんです。」
『日本軍だって?!』
子供達が反応する。
「姉ちゃん、その人も日本軍の仲間か?」
子供の1人が敏麗を指差す。敏麗を知らないということはこの村には新聞すらないのだろうか。
「この方は敏麗さん、宮中巫女で私がお世話になってる日本軍の人と知り合いなの。皆聞いて、この人は今私達中国人少女のために女子校を作ろとしてるの。日本人も皆悪い人じゃないしそれにその人は私の両親を殺した人ではなかった。」
鈴花は両親の敵討ちがしたくて芳子達関東軍に近づいた。芳子に買ってほしいとお願いしたのも両親を殺した犯人の情報を得るためだった。
その時
「やーい!!」
庭の方から大声が聞こえてくる。
そかには数人の子供がいた。
「幽霊の子供!!」
「こいつらに近づくと呪われるぞ!!」
「俺達が退治してやる!!幽霊退治だ!!」
子供達がこちらに小石を投げてくる。
「君達辞めないか?!」
村長が子供達や敏麗を庇いながら叱咤する。しかし子供達はやめようとしない。
1人の少年が鈴花目掛けて石を投げようとした時
「痛っ!!」
1人のスーツ姿の男が少年の腕を掴む。
「痛い!!やめろよ!!」
男は少年の腕を離す。
「わー!!」
子供達は一目散に走って逃げていく。
「どこのどなたか存じ上げませんがありがとうございます。」
村長がお礼を言うと男は帽子を外す。
『田中中佐!!』
敏麗と鈴花は声を揃える。男の正体は芳子の上官である田中であった。




