農村の少女
「失礼致します。」
満州国が建国して1カ月が経った頃芳子が軍の本部の指令室を訪れる。
「田中中佐、只今戻りました。」
「農村部の視察ご苦労だったな。」
芳子は建国後軍の総司令官に任命された。
最初に与えられた任務は農村部の視察である。
「まあ、座れ。」
芳子は席を勧められソファーに着席する。
「それでどうだった?農村部の状況ですよ。」
「最悪ですよ。」
芳子は部下を引き連れてとある村へと馬を走らせた。山道を2、3日馬で移動したところ、
ひひーん
芳子の馬が突然急停止する。村の入り口には村人達が待ち構えていた。
「歓迎してくれるのか?嬉しいな。」
しかし村人達は鎌や鍬を手に持ち芳子達を睨み付けている。どうやら歓迎の意志はなさそうだ。
「皆さん、この村の人ですか?」
芳子は馬から降りて目の前の村人の一人に尋ねる。
「司令官危ない!!」
咄嗟に部下の1人が芳子を庇う。
「大丈夫か?!」
部下は腕から血を流している。村人達の手には石が握られていた。
「何しに来たんだ日本軍?!」
「今すぐ村から出ていけ!!」
村人は芳子達目掛けて手にした石を投げてくる。
「退却だ!!」
芳子は部下に命ずると自身も馬に乗り込みその場を去る。
村人達は歓迎どころか芳子達が日本人と分かると敵意を露にしてきた。視察どころではないのだ。
「あそこだ、止まれ!!」
村から馬を走らせると林の中に使われていないであろう小屋があった。負傷した部下の手当てのために立ち寄ることにした。
傷の手当てをしている突然扉が開く。三つ編みの少女がいた。
「誰だ?!」
兵士達は一斉に少女に銃を向ける。
「銃を降ろせ!!」
芳子が命令する。
「しかし司令官。」
「降ろせと言っているんだ!!」
兵士達は芳子の命令通り銃を降ろす。芳子は少女を手招きし小屋へと入れる。
芳子は少女を自分の傍へと呼ぶ。
「君はあの村の人か?」
「はい、壮鈴花と申します。現在14才です。」
年の割りにはしっかりした少女だ。
「女学生さんか?」
「いえ、学校は村の小学校を出たきりです。折り入って日本の軍人さんにお願いがあります。私は買って頂けないでしょうか?」
鈴花は芳子に頭を下げる。
「いいよ、お嬢さんいくら?」
兵士の1人が軍服の内ポケットから財布を取り出す。
「待て!!」
芳子が制止する。
「彼女は僕が買い取る。」
鈴花はそのまま芳子の家に連れて帰ったという。
「お前奥さんいるのにお持ち帰りしたのか?」
「田中さん、僕は彼女を家の小間使いとして雇っただけです。変な想像しないで下さい。」
鈴花は小学校を出ると実家の農業を手伝い始めた。しかし日本軍が突如やって来て土地を明け渡すように言われた。従わなかった両親や村人達はその場で射殺された。
「家族も耕す土地もなくなって相当追い詰められていたのだろう。あんな行動に出たのだと思う。暫くは僕の家で面倒見るつもりです。」
「お前本当好きだな。身寄りのない女の子家に招くの。奥さんだってそうだろう?」
「家族を早いうちに亡くしてるのは僕も一緒ですから。まずはそう言った少女達を救うことからだと思います。ただ、他にも話し合うべき事はあると思いますが。」
芳子が田中に詰め寄った時、部屋にノック音が木霊する。
「入れ。」
「失礼致します。」
入って来たのは敏麗だった。
「なんだお前か、どうした?」
「単刀直入に申し上げます。この国に女子校を新設することをご承認下さい。」
敏麗は田中の机の上に企画書を置く。




