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敏麗の秘策

「吉岡さん、それはわたくしに女神になれとおっしゃるのでしょうか?」

「はい、貴女は女神です。」

「うふふ、面白い事をおっしゃるのね。わたくしは霊力があっても所詮は人間。神にはなれませんわ。」

「いえ、貴女ならなれます。貴女が天照大神の声を聞き、貴女の美しい姿で女神の言葉を告げる。貴女が満州国を照らす天照大神なのです。」

「その通りです。」

「いっそのこと天照大神を満州国の国神にするべきでは。」

「敏麗殿、貴女は満州の天照大神です。」

他の軍人達も吉岡に同調しはじめる。

「芳子。」

溥儀の隣に座る婉容は自分の元に芳子を呼ぶ。

「どうされました?」

「わたくし何だか怖くて。日本軍はなぜ日本の神なんかを?ここは日本ではなく中国大陸のはずですわ。」

「大丈夫です。」

芳子が婉容の手を握る。それを見ていた敏麗は

「陛下!!」

溥儀に呼びかける。

「わたくしの予言の鏡には女禍の姿が見えました。満州国を栄光へと導く姿が。女禍は中国を創りし女神。ここは中国大陸。日本ではございません。どうぞご宣言下さい。満州国の国神は女禍だと。」

溥儀は立ち上げると口を開く。

「本日建国に伴い満州国の国神は女禍にすることを宣言する。ここにいる巫女敏麗を女禍の代弁者とし私の政の右腕となってもらう。敏麗の言葉は神の言葉、私の言葉も同じく神の言葉と思うように。」

溥儀の宣言に招待客達は喝采を送る。

軍人達は悔しそうな顔をしていたが婉容は芳子の隣で安堵の表情を浮かべる。芳子は敏麗によくやったというように微笑みかける。



「敏麗ちゃん、今日のあれは何だ?」

戴冠式が終わり広間に移ると舞踏会が催される。敏麗は旗服から白いドレスへと着替え燕尾服姿の芳子と組んで踊る。 

「先手を打っただけですわ。」

芳子の耳元に顔を近づけ囁く。 

「鏡に写ったのです。」

「鏡って奏先生の形見の未来が見えるとかいう鏡か?」

「ええ、わたくし見てしまったのです。日本軍が満州国の国神を天照大神にしようとしてるところを。」

敏麗は鈴時代の知識を鏡で未来を予言したとして話す。

「何だって?」

「以前に申し上げた通り満州国は日本がアジア民族を虐げるために作った偶像国家ですわ。天照大神はその一歩。黙認してしまえば後は日本軍の思うつぼ、絶望の未来しかありませんわ満州国も貴女も。」

「相手の動きが分かれば阻止できるってわけか。」

芳子は敏麗の策略に納得したようだ。

2人の話が終わるとほぼ同時にダンスの曲が終わる。二人向かい合ってお辞儀をする。

「芳子」

次の曲が始まると婉容が芳子の元にやってくる。

「わたくしとも踊って。」

「はい、皇后様がお望みなら。」

芳子はすっかり婉容のお気に入りだ。2人が踊り出すのを見届けると玉座で日本軍の軍人達に囲まれている溥儀に目をやる。その中にはあの吉岡の姿もあった。

「皇帝陛下。」 

敏麗は軍人達の間を割って溥儀の元へ向かう。 

「先ほどの国神のご宣言素晴らしかったですわ。」

「ありがとう。」

「皇帝陛下は踊られないのですか?」

「私はあまりこういった場所が苦手で。」

「宜しければ一曲お願いできますか?リードしてくださる?」

敏麗は溥儀と共にフロアへと向かう。ダンスの最中も溥儀は婉容と芳子の方ばかり気にしている。

「陛下」

敏麗が声をかける。

「パートナーをしっかり見て下さい。まずは相手を見ることが大事ですわ。ダンスも政治も。」

「そうだな、僕は時折妻に申し訳なく思う。」

婉容はイギリス留学を望んでいたしかし本人の意志を無視した政略結婚で滅びた王朝に嫁いできたのだ。

「ご不安なのですね。でしたら占って差し上げますわ。お2人の未来を。」

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