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満州国の女神

新章突入敏麗ちゃんの本格始動です。

 1932年3月。

中国に新国家が誕生した。その名は満州国。「王道楽土、五族共和」をスローガンとしてアジア民族が共存することを目標とした新国家であった。

新居では皇帝溥儀の戴冠式が行われ日本軍や中国の貴族達から祝福を受ける。彼は芳子と同じ愛新覚羅家の人間。芳子の夢でもある清王朝の復活が実現したのだ。式には敏麗も呼ばれていた。宮中巫女に任命されたのだ。

敏麗は鈴を片手に舞を披露した。白地に胸元にピンクの花が散りばめられた巫女装束姿の彼女にその場にいた人々は虜になった。ある者は彼女を悦劇のヒロインと、またある者は虞美人とそして日本軍の幹部は三保の松原の天女に例えた。

「本日はこのようなおめでたい席に招かれた事大変光栄に思います。」

敏麗は舞が終わると目の前に鈴を両手で差し出し一礼する。

「わたくし音敏麗が宮中巫女となったからには宮廷や国の祭祀を執り行うだけでなく、中国の創作に女神女禍(にゅわ)の声を聞き皇帝の政の支えとなり国の発展、アジア民族の友好の貢献していく所存でございます。清王朝の栄光がとこしえに続かんことを祈りて。」

再び敏麗は一礼すると喝采を浴びながら広間の端にいる軍服姿の芳子に微笑みかける。しかし他の日本軍の人達はどこか懸念そうな顔をしている。

「敏麗殿」

敏麗に1人の軍服姿の男が話しかける。彼も日本軍の人間であろう。

「私はこの度皇帝溥儀の参謀に任命されました吉岡安直と申します。貴女の舞、素晴らしかったです。三保の松原の天女を思い出しました。」 

「ありがとうございます。三保の松原、確か天女が羽衣を木にかけて水浴びをしている物語でございますね。」

「敏麗殿は日本の神話にもお詳しいのですね。でしたら話は早い。貴女は天照大神の話はご存知ですか?」

(やっぱり来たわね。)

敏麗は鈴だった頃を思い出す。歴史の資料で読んだことを。昭和8年。満州国が建国された1年後溥儀が満州国の国神を制定した。それが天照大神だ。日本軍がアジア民族に日本の神を信仰することを強いた。それを防ぐために敏麗は先手を打って中国の女神女禍の名前を口にしたのだ。

「ええ、日本の女神様ですわ。彼女が岩戸に隠れ姿を消したことにより日本は暗黒の闇に包まれる。そして人々は彼女を呼び戻すため宴をした。」

「そうです。彼女は太陽のような存在なのです。満州国はまだ誕生したばかり。そして日本と中国の関係はまだ良好とは言えません。今満州国に必要なのは太陽。どうです?貴女が天照大神の代わりにこの満州国の太陽になってはいかがでしょうか?」

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