敏麗の守護霊
満州国建国も決まった1932年3月上旬。
敏麗は芳子を連れ霊園のある寺院に来ていた。
婉容護衛の道中国民党の密偵に囲まれた時に助けてくれた少女の霊のことを芳子に聞いてみた。
「その娘か?」
芳子は少女の霊を絵に描いてくれる。芳子が描いたのは黒髪を2つに縛った赤いチャイナ服の少女だった。
「春蓮ちゃん!!」
絵の中の少女は敏麗が幼い頃に一緒に遊んだ少女の霊だった。芳子を連れ春蓮の眠るお墓へと花を供え手を合わせる。
(春蓮ちゃん、わたくしと芳子様を助けてくれたのね。ありがとう。)
「敏麗ちゃんのお友達だったのか。」
「ええ、わたくしが唯一友達と呼べた相手でしょう。」
少しの時間であったが一緒にお話をして、木登りをして木の上から一緒に天の川を見た。敏麗にとっても春蓮にとっても子供らしい遊びができたのがそれっきりであった。
「身体が弱くて外に出られなくて生きてる時に外で遊べなくて。それが心残りだったの。」
お参りを終え寺院の境内を歩きながら春蓮との思い出話をする。
「生きてる時?!」
芳子はその言葉に引っ掛かるようだ。
「ええ、春蓮ちゃんとお友達になった時は既に幽霊だったわ。」
「君は人間よりも幽霊に好かれるんだな。」
芳子が笑い出す。
「そんなに笑わなくてもいいじゃない。」
「ごめんごめん。」
「でも不思議ね。」
敏麗は一つ疑問に思ってることがあった。
「春蓮ちゃんはわたくしの目の前で成仏したの。だけどどうしてわたくしの前に現れたのかしら?」
春蓮はまだ成仏してないのかと思い始めたのだ。
「敏麗ちゃん」
芳子が声をかける。
「僕は霊の世界のことはよく分からない。だけど春蓮ちゃんの霊も僕の母と一緒じゃないのかな。」
「芳子様のお母様とですか?」
「ああ、きっと春蓮ちゃんは君を守りたかったんだ。僕の母が廃墟で僕達を守ってくれたように。」
芳子は敏麗を真っ直ぐに見つめ手を握る。
「僕が君のことしっかり守らなきゃいけないね。春蓮ちゃんや奏先生が安心して天国で過ごせるように。」
「何言ってるのよ?霊感すらないのに。」
「君は霊と戦えても人間とは戦えないだろう。だけど僕は霊とは戦えないが人間相手なら互角に戦える。国民党のやつらや反日の中国人もいつ襲ってくるか分からないだろう。だから君を守る、約束する。」
芳子は膝まずくと敏麗の右手を取り手の甲に口づける。敏麗は顔を真っ赤に染める。
「何よ?!わたくしを口説いてるおつもり?」
「口説いてると言えば口説いてるな。」
背後から敏麗の腰に手を回す。




