敏麗の初恋
敏麗は放たれる銃弾を前に目を閉じる。
(もはやここまでか?)
敏麗が死を覚悟した時
「敏麗ちゃん!!」
敏麗は抱き抱えられそのまま地面に倒れ込む。
「先生!!」
敏麗を庇ったのは奏だった。奏は血を流して倒れている。
「先生、しっかり。今田中中佐を呼んできます。すぐに手当てしてもらいましょう。」
敏麗は巫女装束の胸元からハンケチを取り出して止血しようとする。
「敏麗ちゃん、いいんだ。」
「良くないです。わたくし先生のことが」
奏は人差し指を敏麗の口に当てると敏麗の涙をふく。
「ありがとう。君は素晴らしい弟子だ。」
敏麗は首を横に振る。
敏麗が幼い頃周囲の子達は敏麗の能力を知っていた。。霊が見える事自体は普通の事であったし、周りに隠すこともしなかった。
「敏麗ちゃん、今幽霊いる?」
同じ学校の子達は学校の課外授業等で寺院や山道に行くと決まって敏麗に尋ねた。
「ここにはいないわ。」
「良かった。」
敏麗がいないというと皆安心する。敏麗も数珠を日頃から持ち歩き霊が近づいてることを数珠が感知すると周りに教えるようにしていた。
「敏麗ちゃんがいれば何も怖くないね。」
敏麗は皆に頼られるのが嬉しかった。
しかしそれも小学校を卒業するまでの話であり、女学校に上がると敏麗は教室で浮いた存在になった。
「あの娘よね、霊が見えるって娘。」
「そうよ、どうせ気を引きたくて嘘を言ってるんだわ。」
「そうよ、何が天才霊能少女よ。仕事とか言って本当は学校に来たくないだけでしょ。」
同じ級の少女達は影で敏麗の悪口を言っていた。友達もいなかった敏麗はいつも自分の机で影口を言われるのを黙って聞いていた。今すぐにでも帰りたい。そんな気持ちになった。女学校に居場所のない敏麗に優しく手を差しのべてくれたのは師でもある奏であった。
「敏麗ちゃん、学校はどうだい?」
ある日奏に訪ねられた。敏麗は無言でうつ向く。
「そうか。」
奏は何も言わずに髪をなでてくれる。
「敏麗ちゃん、君の居場所は学校だけではない。これまでどれだけの人君の霊力で救われたと思う?春蓮ちゃんだって君に会えてうれしそうにしていた。君を必要としてくれる人はいるんだよ。」
敏麗を理解してくれるのは奏だけであった。これが敏麗の初恋であった。
しかし敏麗が15才の時。
奏の屋敷に食事に誘われた。名前の知れた霊能者が集まる中奏から1人の女性を紹介された。
青地に赤い薔薇のチャイナドレス姿の美しい女性だ。
「貴女が敏麗ちゃんね。初めまして。主人がいつも貴女の事話しているわ。」
(主人?)
彼女は奏の妻であった。敏麗の初恋は始まることなく終わってしまった。
「敏麗ちゃん!!」
遠くで敏麗を呼ぶ声がした。
「敏麗ちゃん、君を守るのは僕ではないようだ。」
「先生、何も言わないで!!」
「彼女なら君を守ってくれるよ。」
奏はゆっくり目を閉じる。
「先生!!」
敏麗が大声を上げて涙を流していると
「敏麗ちゃん、どうした?」
芳子がかけつける。
「先生が!!先生が!!」
敏麗は先生と繰り返すだけで立ち上がることができない。その時
「いたぞ!!」
追っ手の姿が見える。
鈴としての記憶を取り戻す前の敏麗ちゃんです。
初恋が芳子様じゃないってパターンも初です。
芳子様初恋だったらそれ以上の人探すの大変ですよね。




