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霊達の目的

敏麗は奏と田中と共に女の後を追う。女はゆっくりと歩き途中立ち止まって3人に手招きする。着いていってはいけない、しかし徐霊をしない限り馬車は動かないのだ。

「先生、1体なら徐霊できないでしょうか?」

「敏麗ちゃん、早まるな。僕の数珠も君の鈴も反応していない。さほど悪い霊ではないのだろう。彼女は僕達に伝えたいことがあるのかもしれない。」

暫く歩くと女は山小屋の前で立ち止まる。女はこの山小屋で亡くなったのか?

「この小屋に何かあるの?」

敏麗は鈴を持って女に近づく。その時


「敏麗ちゃん、危ない。」



敏麗目掛けて銃弾が飛んで来た。奏はとっさに敏麗を庇う。

「先生!!」

「僕は大丈夫だ。」

「次はお前だ!!巫女」

敏麗が顔を上げる。女の手には拳銃が握られていた。田中が女に向けて銃を構えるが小屋の中から黒い中華服の男達がぞろぞろと現れ敏麗達目掛けて拳銃を突きつける。

「銃を捨てろ、日本軍。」

背後から聞こえてきた声に振り返る。 

「川島!!」

「瑛林?!」

芳子と瑛林と婉容は数人の男達に銃を突きつけられ連行されてくる。中には荷馬車の御者もいた。

「そういう事か。お前ら国民党の密偵か?」

「ご名答です。田中中佐。」

女は鬘を外す。

「ちょっとあなた方の仲間を脅かしてみたら効果覿面のようでしたわね。」

「幽霊騒ぎもお前達の仕業ってわけか?」

「そうよ。まさか本物の霊能者を連れてくるなんて関東軍も笑わせてくれるわ。」

「我々の仲間はどこにやった?」

「さあ、今頃は谷底でしょう。」

女は満面の笑みを浮かべている。

「ふざけるな!!お前達の目的は何だ?!」

今度は芳子が銃を御者に向ける。

「こいつの命が惜しけりゃ目的を言え!!」

女はやれやれと言ったように口を開く。

「分かりませんか?そこの女ですよ。」

女が指差す先に一同は目線を送る。  


「わたくしですか?」


彼らの要求は婉容であった。

「その女はこちらに渡して下さい。そうすればあなた方の命だけは助けてあげますよ。」

「ふざけるな!!皇后をどうする気だ?!」 

「待て!!川島。」

芳子が御者の頭に銃を突きつけるが田中が制止する。

「国民党の皆さん、まずは銃を下ろして下さい。」

田中はゆっくりと自分の銃を地面に置き芳子にも目配せする。お前もやれというように。

(話し合いで解決する気か?)

芳子も同じように銃を地面に置く。それを見た国民党の密偵達も次々に銃を置く。その場にいる全員が武器を持っていない事を確認すると田中は続ける。

「皇后様はご自身の意志で我々に同行して下さってます。彼女の意志に反する行いはあまり好ましくないかと思います。あまりにも横暴ではありませんか?」

密偵達は返す言葉すら見つからないようだ、

「皇后様、いかがお思いでしょうか?」

「わたくしは関東軍の方々を信じています。この方々はわたくしに自由を与えてくださる。わたくしは関東軍の方々と行動を共にします。あなた方の言いなりにはなりません。」

「それが皇后様の答えです。」

密偵達は返す言葉に迷っている。その時には


「今だ!!走れ!!」


田中の合図で一同が一斉に走り出す。

芳子はとっさに地面に置いた銃を拾い皆の後を追う。

「待て!!」

後方からは追っ手の声がする。

敏麗は互いハイヒールに丈の長い巫女装束のため足元が悪い。

「きゃっ!!」

転倒する敏麗。

「1人見つけたぞ!!」 

密偵の一人が敏麗に向けて銃を放つ。


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