紫禁城に届いた荷物
いつもと違った芳子様が見れるかもしれません。
北京。紫禁城。門の前に荷馬車が通る。
「待て。」
門の前の守衛に止められれ御者は馬車を停車させる。
「皇后様に頼まれてチャイナドレスをお持ちしました。」
「通れ。」
守衛は宅配業者だと分かるとあっさりと通してくれた。荷馬車は門を通ると城の玄関で止まる。荷馬車の後ろから4人の配達員が降りてくる。2人は成人男性であとの2人は女性と少年だ。
配達員の1人がベルを鳴らすと女中がやってきた。
「どちら様でしょうか?」
表情を一切変えず生気のない声で対応する。
「皇后様にお荷物をお届けに参りました。」
女中は分かりましたと言って呼び鈴で男手を呼ぼうとする。皇后に届けられた物は女中が確認し男の小姓が皇后の部屋まで運ぶことになっているようだ。
「お待ち下さい。こちらは送り主の要望で我々が皇后様直々に運ぶようにと言われています。」
配達員の男が説明する。
「一体送り主ってどなたですか?」
「イザベルというイギリス人の女性です!!」
女性の配達員がとっさに答える。
イザベルというのは皇后が嫁いでくる前の英語とピアノの家庭教師をしていたイギリス人の女性だ。女性配達員は荷物と一緒に送られた手紙を見せる。宛名が英語で書かれている。
「ここにそう書かれてありました。」
女中は封筒を渡されると中に入っている便箋に目を通す。
「分かりました。どうぞお通り下さい。」
女中は配達員に手紙を返すと。荷台に荷物用を乗せ城内へと入って行く。
女中が皇后の部屋まで案内してくれた。
「こちらです。」
女中はピアノが鳴り響く部屋の前で立ち止まる。
「皇后様、お荷物が届きました。」
ノックをして声をかけるとピアノの演奏がとまる。ドアが開くと赤い旗服姿の美女が現れた。彼女が皇帝溥儀の正室であり清朝の皇后婉容である。
「まあ、お荷物誰からかしら?」
「イザベルという女性からでございます。」
「イザベル先生から?嬉しいわ。さあ、皆様お入りになって。」
配達員達が部屋に招き入れられると女中は一礼して部屋を出る。
「皇后様、よくぞご無事でした。」
配達員の男の1人が婉容に一礼する。
「ご無事でってどういう事なの?!」
「皇后様」
女性配達員が鬘を外す。
「貴女は?!」
「私達は貴女をこの紫禁城から脱出させるために参りました。私も貴女と同じ清朝の一族です。愛新覚羅顕シ、今の名は川島芳子といいます。」
「川島?日本人のような名前ね。」
「はい、6才の時に日本人の養女になり日本で教育を受けました。全ては王朝復活のために。こちらが僕の上官です。」
芳子は婉容に先ほどの男を紹介する。
「関東軍の田中です。」
配達員というのは嘘、彼らは皇后脱出の命を受けてきた日本軍だったのだ。




