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紫禁城へ

「お姉様、なぜこのような姿を?!」

瑛林は男の子が着るような中華服を着せられ髪は纏められて帽子を被せられる。

「これでは男の子みたいです。」

瑛林は自分の姿を姿見で見ながらいじけている。

「ええ、貴女はこれから荷物運びの少年になるのですよ。」

「入るぞ!!」

外からノックと共に田中の声が聞こえた。

「どうぞ。」

部屋にやって来たのは中華服に着替えた田中と敏麗の師匠奏であった。2人とも町人の姿をしている。

 

 時は遡ること3日前。田中の部下が任務の最中に霊を見たという情報が入ってきた。その場所は紫禁城にいる皇后を脱出させ満州の新居へと護送する道中でもあった。

「田中さん、そのためにも彼女の力が必要です。」

芳子の進言により敏麗も護送に同行することになった。


 

「準備はできたようだな。」 

奥の部屋から白い中華服に黒いスカートに髪を1つに縛った女性が現れた。隣には千鶴子もいる。

「敏麗、こちらの女性は誰だ?」

「田中さん、自分の部下の顔も忘れたのですか?」

女性は鬘を外す。

「芳子か?!」

女性の正体は芳子であった。スカートを履くのは女学校の制服以来だ。

「女に戻るなんてどういう風の吹き回しだ?」

 芳子は宅配業者に成り済まし紫禁城に入る作戦を思い付いた。しかし男性だけでは日本軍の使いだと疑われ兼ねない。

そこで自らが女性の姿になり、幼い瑛林を少年として一員に加えることによりカモフラージュしようと考えたのだ。 

「女子供が軍にいるなんて誰も想像しませんよね、田中さん。」

その時

「失礼致します。」 

部下の1人がやってきた。

「馬車の準備が整いました。」

「ああ、行こう。」

各々が皆部屋を出ようとしたとき

「お兄様。」

芳子が千鶴子に呼び止められる。

「お兄様、必ず帰ってきて下さいね。」

「ああ。」

千鶴子の手を握り肩を抱き寄せると額に口づけをする。

「必ず戻ってくる。だから千鶴ちゃんは待っていてほしい。僕を信じているのなら。」

「はい、待ってます。信じているから。」

 


 千鶴子との別れを済ませると屋敷の外に停泊してる馬車に乗り込む。2台で向かうことになり、前方には奏、敏麗、瑛林の乗せた馬車が動こうとしている。

「川島やっと来たか。」

馬車にはすでに田中が乗っていた。

「はい、千鶴ちゃんにお別れを言っていました。」

田中は一言そうかとだけ答える。

「それにしても田中さん、敏麗ちゃんの先生にも依頼するなんて思いませんよ。皇后様を運び出すのに男手はあった方が助かるが軍の人間を使ってもよくなかったですか?」 

「それもあるが、彼は名の知れた霊能者だろう、新国家に大いに役に立つと思うんだ。敏麗とかいう娘同様にな。」

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