裏切り者の末路
「ちょっとそこの守衛」
牢屋では敏麗が傍で待機していた守衛に呼び掛ける。
「何だ?」
守衛が牢屋の前までやって来る。
「お願いがあるの。総統閣下付の陰陽師と徐霊対決をさせてほしい。」
敏麗はとある場所を対決の会場に指定する。
その頃人里離れたお屋敷に1台の馬車が止まる。
「降りろ。」
馬車の中から憲兵に両腕を捕まれた芳子が降りてくる。
「ここは?」
芳子の目の前には洋館があった。かつて軍の任務で訪れた事があり敏麗と初めて出会った場所だ。
「こんなところで僕を処刑しようなんて悪趣味だな。」
「あら、処刑なんて生ぬるい事はしませんわ。」
馬車の中から千鶴子が降りてくる。
「お兄様もこの場所ご存知よね?」
「ああ、敏麗ちゃん曰く優秀な霊能者が束になってかかっても敵わない悪霊の巣窟だ。」
芳子もこの場所で取り込まれかけた。敏麗と母の守護霊がいなければ今頃彼らの仲間になっていた。
「総統閣下付陰陽師でも徐霊は不可能だった。処刑を執行するのは私達じゃない。私達はただここで裏切り者の末路を見てるだけ。」
「千鶴ちゃん、君も日本人だろ?なぜ国民党の肩を持つ?」
千鶴子は芳子の襟元を掴む。
「貴女と別れた日日本人川島千鶴子は死んだのよ。あの人に拾われたあの日私は中国人毛千華として生まれ変わったの。漢奸川島芳子、貴女は国だけでなく最愛の妻も裏切った。その報い受けるといいわ。」
芳子は再び憲兵に腕を捕まれ屋敷の中へと連れていかれる。
「おい、開けろ!!」
芳子が入ると扉が閉められる。
千鶴子は馬車に戻り芳子の叫び声を聞いて笑っている。
「楽しませてもらうわ。お兄様。」
「おい、開けろ!!」
鍵をかけられたのか扉はびくともしない。
「銃があれば打ち破って逃げる事はできるが。」
芳子は武器になるような物を探そうと屋敷の中を探索する。
「それにしても薄気味悪い場所だな。」
以前来た時は敏麗と出会うまでは何とも思わなかった。しかしこの場所で見た物を考えると寒気すらしてくる。
芳子は2階の階段を上がる。
ピタ ピタ
誰かが着いてくる足音がする。
「お出ましか」
芳子は足早に階段を登る。すると背後の足音も速くなる。
芳子は一気に階段を駆け上がると目の前の扉を開け部屋に入ると鍵をかける。そこは以前敏麗と出会った部屋だ。彼女の妹が閉じ込められていたのだ。
「窓からなら逃げられるか。」
芳子は窓を開けベッドのシーツを繋ぎロープ代わりにしようとする。
ドン ドン ドン
その間にもドアはおもいっきり叩かれる。
「そこまで来てるのか?!」
芳子は急いでベッド天蓋の柱にシーツの先を結びつけまう一方の先を自分の体に巻き付ける。しかし
ピシャン
窓が勢いよく閉まるとドアが真っ正面に倒れてくる。目の前には黒髪の女がいた。芳子は急いでシーツをほどこうとするが手元が狂って上手くほどけない。女はゆっくりと芳子に近づいてくる。その時だ。どこからかお経が聞こえてきた。芳子に手が届く寸前のところで女の動きが止まる。




