戦争の終結
「なんだ、君は?!」
東絛が客間の襖を開けると目の前に芳子が立っていた。
「川島です。」
「芳子、なぜお前がここにいる?」
「総理、あなた本気で言ってます?」
芳子は田中の問いかけを無視し東絛に尋ねる。
「何の話だ?」
「あなたは本気で思ってるのですか?国を豊かにするためには犠牲は必要と。」
芳子は先ほど東絛が口にした事を口にする。
「当然だろう。我が国の歴史を振り返ってみたまえ。天下を治めた家康の軍勢にだって命を落とした者もいる。日本だけでない。国のために民は死に歴史は紡がれている。大陸だってそうであろう?皇后様。」
東絛は敏麗の方へ向き直る。
「総理。確かにあなたのおっしゃる通り歴史や国は犠牲の積み重ねと言ってもよいでしょう。しかし国を豊かにして何になるのですか?得た富はあなた方一部の政治家や軍人が懐に入れ民は搾取されるだけ。歴史で言うならフランスのブルボン王朝もロシアのロマノフ王朝も一部の王族がまさにその通りでしたわ。たけき者もついには滅びる。ブルボン王朝もロマノフ王朝も国民の手によって滅ぼされましたわ。次にそうなるのは大日本帝国かもしれませんわ。」
敏麗は東絛を睨み付けながら告げる。
「黙れ!!」
東絛は敏麗と芳子を蹴り飛ばす。
「きゃっ。」
「旦那様!!」
客間の外から複数の黒服の男達が現れる。
「この二人を廊屋にご案内して手厚くもてなしてあげなさい。」
「了解しました。さあ、立て。」
敏麗と芳子は黒服の男達に両腕を捕まれる。
「さあ、来い。」
二人が連れて行かれそうになった時
ピシャッ
襖の扉が1人でに閉まる。
(ゆりか)
ゆりかが閉めたのだ。ゆりかは棚から本を持ち出し芳子の腕を掴んでる男達を殴る。芳子は田中と目を合わせる。
「総理」
芳子は田中と共に東絛に向かって拳銃を突き付ける。
「我々は戦争の終結を要求します。」
「あなたのお友達を見て下さい。」
黒服の男達はゆりかが本や座布団を投げてるのを見て走って逃げていく。
「あなたの負けです。戦争の終結を。満州からも手を引いて下さい。」
芳子が東絛のこめかみに拳銃を当てる。
「分かった!!お待ちの要求は呑む。だから銃を下ろしてくれ!!」
東絛の叫び声が屋敷中に響き渡る。
昭和16年12月20日
天皇がラジオで戦争の終結を発表した。アメリカ大陸からも満州からも手を引き領土はそれぞれの国に返還すると。これを玉音放送と言う。
「良かったですわ。」
敏麗達は加代子の長屋で玉音放送を聞いていた。
「敏麗様、皆様」
その場にゆりかもいる。
「ありがとうございました。」
ゆりかの体は光に包まれている。
「行くのね。上の世界へ。」
「僕生まれ変わったら必ず男役になります。芳子様みたいな。」
ゆりかは芳子の方を見る。
「生憎だが僕は男役じゃない。」
「いや、男役だ。芳子様の身体踊りやすかったですよ。」
ゆりかは満面の笑みを見せると消えていく。
次回から新章突入します。




