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敏麗とゆりかの大芝居

「皇后様がお忍びで来られるとはこれは驚きました。」

「いえ、わたくしも来日はお忍びで入らしたのですがやはり友好関係を気付いた国の首相には挨拶をしていかないと失礼かと思いまして。日本は素晴らしい国ですわ。少女歌劇に少女雑誌と日本の少女達から満州が学ぶべき物は多々ありますわ。」

敏麗は日本の尊重すべき部分を並べる。

「気に入って頂けて光栄です。」

「しかしその素晴らしい文化もそう長くは続きませんわ。」

敏麗は暗い表情を見せる。

「いかがされました?」

「わたくし占いで見てしまいましたの。日本の未来を。日本は数年後戦争に負けますわ。」

敏麗は前世の知識を占いで見たと言って話す。

「皇后様、いくらご冗談でもそのような発言見過ごせませんな。」

「冗談なんかではございませんわ。」

敏麗は東絛の背後にある棚の上に向け左手を伸ばしゆりかに目配せをする。


ガタン


棚に飾られた日本人形が落ちる。実際にはゆりかが落としたのだが。先ほど敏麗はゆりかの耳元でこう言った。自分が合図したら棚の上の日本人形を落としてほしいと。

「おやおや、この娘が落ちるなんて珍しいですね。娘のお気に入りなんですよ。」

東絛が人形を拾う。しかし敏麗が再び人形に向かって手を伸ばすと人形は東絛の手を離れる。そして敏麗が左手で円を描くのと人形も円を描くように宙を舞う。人形を動かしてるのはゆりかだ。人形はゆりかの手で元にあった場所に戻される。東絛はその様子を口を開いて見ているだけだ。

「娘さんのお気に入りの人形でしたのね。これは大変失礼致しましたわ。」

「今のは貴女が?」

「ええ。大陸でもわたくしの霊力を疑う者がおりまして。少し念力を使わせて頂きましたわ。これで信じて頂けましたか?総理。」

次は敏麗は棚の上の本に向けて手をかざす。ゆりかが近づいて本を持ち上げようとする。

「分かった。信じる。信じるからやめてくれ。」

東絛の懇願に敏麗は手を引っ込める。ゆりかも本から手を離す。

「分かって頂き幸いですわ。でしたら本題に移りましょう。総理、1945年8月にアメリカは広島と長崎に原爆を落とします。」

「原爆って何だ?」

隣にいる田中が尋ねる。

「原子爆弾ですわ。多くの命が犠牲になりますわ。日本はアメリカとソビエトから無条件降伏を強いられますわ。日本に勝利の道はございませんわ。」

「何を言ってる?証拠はあるのか?!」

東絛は怒鳴り声をあげテーブル叩く。

「わたくしの予言が証拠でございます。」

「もういい!!付き合いきれるか!!」

東絛は立ち上がり部屋を出ようとする。

「お待ち下さい。総理。」

田中が引き留める。

「総理、皇后様の予言は本物です。」 

田中が庇う。

「ええ、日本政府は狂って竹槍訓練や特攻隊などくだらない政策ばかり」

「待て」

田中が敏麗の言葉を遮り目線を送る。お前は黙ってろと言うように。

「彼女の言う通り今手を引けば犠牲は最小限に食い止められます。」

「国を豊かにするためには多少の犠牲は付き物だ!!」

東絛は客間の扉を開ける。

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