霊の同居
「日本軍の軍人が放った銃により私達は絶命した。」
敏麗の口を借りたゆりかはこの屋敷で起こった事を話す。
「つまり君は誕生日会ができなかった未練でここに留まってるわけか?」
芳子が尋ねる。
「それもある。だけどお父様やお母様、それから妹達に申し訳なくて。」
彼女の一言で銃の引き金が降りたのだ。気にしているのも無理はない。
「ゆりかさん、君の家族達は一緒じゃないのか?」
今度は田中が尋ねる。
「今残っているのは私1人だ。後は聞きたい事はないか?」
「僕はもう大丈夫だ。」
「俺もない。」
「そうか」
敏麗の中にいるゆりかが蝋燭を吹き消す。敏麗はその場に突っ伏す。ゆりかが体から出て行ったのだ。
「敏麗ちゃん」
「敏麗」
暫くして芳子と田中に名前を呼ばれ敏麗は意識を取り戻す。
「芳子様、田中中佐。」
「敏麗ちゃん、ゆりかちゃんは成仏したのか?」
敏麗を起き上がらせながら芳子が尋ねる。
「いえ、まだいますわ。」
敏麗は誰もいない机に目を向ける。するとアルバムが机の上から落ちる。
敏麗は手に取りアルバムを開く。そこにはゆりかと家族が写っている。ゆりかのバレエの発表会の写真や家族で行った軽井沢の別荘の写真もある。
「この屋敷には彼女の幸せな思い出が詰まっているのね。」
それに答えるかのようにベッドの上の人形が横に倒れる。ゆりかが倒したのだろう。
「芳子様、田中中佐、戻りましょう。ゆりかさんも連れて。」
敏麗は人形を持って部屋を出る。
「ちょっと敏麗さん、なんでこの部屋なの?」
芳子の部屋に敏麗と鈴花が泊まっている。その部屋に敏麗がゆりかを置いておく事にした。ゆりかは部屋にある少女雑誌を読んでいる。しかし霊感のない芳子と鈴花には本が勝手に動き頁がめくられてるようにしか見えない。
「鈴花、客間は田中中佐が使ってるのよ。さすがに女の子を男と二人きりにしておくのは良くないわ。」
ゆりかは敏麗に答えるかのように机の本を床に落とす。
「ゆりかさん、本を投げたりしてはいけないわ。」
敏麗がゆりかを諭す。
「すみません。敏麗様。」
ゆりかは聞き分けはいいのかきちんと謝罪して本を元にあった場所に戻そうとする。その時
「皆さん、夕食ができました。」
加代子が3人を呼びに来る。
「きゃあ!!」
加代子は突然大声をあげる。本が1人でに本棚に戻っていくのだ。
夕食の席。敏麗以外なぜか皆固まっている。きゅうすが勝手に動き出し敏麗の湯飲みにお茶を入れる。
「敏麗様、どうぞ。」
お茶をいれているのはゆりかだ。
「ゆりかさん、ありがとう。でも大丈夫だわ。」
ゆりかは敏麗になついてしまったのか傍にいて敏麗の侍女のように動いている。
「あの皇后様」
目の前の加代子が震えながら尋ねる。
「何ですの?」
「ゆりかさんってもしかして」
「そうよ。」
「あの成仏させた方が」
「そのつもりよ。それでここに連れてきたのよ。」




