母との再会
「敏麗ちゃん、これを。」
芳子が写真を手渡す。敏麗が屋敷で見た女性と幼い頃の芳子が写っている。日本に向かう前母と2人で撮った写真だ。
「お預かりしますわ。」
敏麗はテーブルの中央の蝋燭の隣に写真を置く。蝋燭に火を灯し、部屋の灯りを消す。
「それでは隣の人の手を握って下さい。」
4人は互いに手を握る。敏麗は読経を始めると蝋燭が揺れ出す。霊が降りてきている合図だ。
読経をしていた敏麗が突然テーブルに突っ伏す。
「敏麗さん?!」
千鶴子が席を立とうとする。
「動かないで。」
隣に座る瑛林が止める。
「お姉様に霊が乗り移ったのよ。」
敏麗はゆっくり顔を挙げると芳子の方に顔を向ける。
「顕シ、顕シなの?」
敏麗が口を開く。正式には芳子の母の霊が敏麗の体を借りて話しているのだ。
「お母様?」
「そうよ、やっと気づいてもらえた。私はずっと貴女の傍にいたのに。」
「お母様どうして僕を置いて逝ってしまったの?」
芳子は長年かかえていた疑問を母にぶつけた。
「ごめんね。顕シ。」
母は語り出す。父の死後何が起きたのか。
「お父様の亡き後貴女の兄弟は皆散り散りに養子に出され私は城にとり残されてしまった。1人で寂しくてお父様の元に逝こうとしたの。だけど貴女のことが気がかりで。」
「僕は日本の家には僕の居場所なんてなかった。家族と呼べる人なんていなかったんだ。」
「でも今は違う。」
敏麗の視線が千鶴子の方へ向く。
「僕の奥さん、僕のたった1人の家族の千鶴ちゃん。」
「川島千鶴子です。」
千鶴子は敏麗に向かって会釈する。
「千鶴子さん、顕シを宜しくね。あの子は責任感が強くてすぐ無茶をするから気にかけてあげてね。」
「分かりました。」
「顕シ」
今度は芳子に告げる。
「貴女がお父様から清王朝復活の夢を託された。だけど他の道が見えたらそちらに進んでいいのよ。」
「ありがとう。だけど王朝復活は僕自身の夢でもある。僕はここにいる千鶴ちゃんと一緒に取り戻したいんだ。かつてお父様やお母様そして兄弟達と暮らした日々を。」
「分かったわ。もう心残りはないわ。千鶴子さん、顕シを宜しくお願いします。」
敏麗は再びテーブルに突っ伏す。
降霊は終わったのだ。
再び敏麗が目を覚ますと寝室にいた。
「敏麗ちゃん、目が覚めたか。」
「お姉様。」
傍らには芳子と瑛林がいた。敏麗は起き上がる。
「芳子様、お母様無事成仏されました。」
「良かった。僕はずっと母に守られていたんだ。敏麗ちゃんところでお願いがあるんだけどいいか?」
芳子は敏麗に一緒に来てほしい場所があるという。
次回から芳子様建国に向けて本格的動き出します。




