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契約結婚のその後〜追い出した夫が私の価値を知るまで〜  作者: 影茸
契約結婚のその後

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第七十二話 無礼な使者 (クリス視点)

 その挨拶によって、私は目の前の男が自分の待ち望んでいた使者だと理解する。

 ……けれど、今まで胸にあった喜びが消えているのに、私は気づいていた。


 想像もしない事態に固まる私の代わりに、案内してきた使用人が口を開く。


「マイルド殿、無礼では?」


「使用人風情が伯爵家家宰である私に口答えするな! 私は、クリス様の親族の伯爵家の家宰だぞ!」


 しかし、それは火に油を注ぐだけだった。

 怒り狂ったマイルドは、自身を案内してきたはずの使用人を睨む。

 ……その光景を、私は呆然と見つめることしかできなかった。


 私は、マーシェルの両親については理解していたつもりだった。

 しかし、今この家宰を目にしてその時の感覚は薄れつつあった。

 呆然とたたずみながら、私は思う。


 こんな非常識な人間だったのか、と。


 そんな私の内心に気づくよしもなく、マイルドは私の方へとすり寄ってくる。


「それで、クリス様今回侯爵家に立ち寄らせていただいた理由なのですが……」


「マーシェルの行方を知っているのか!」


 その瞬間、私の中にあった今までのマイルドの態度への不満が消え去る。

 代わりに私の胸に浮かんできたのは、ようやくマーシェルの行方に気づいたかもしれないという勝利の確信。


「勘当したあの女の居場所など、私共が知るわけないではないですか」


「……は?」


 しかし、そう私が喜びを感じていたのは一瞬のことだった。

 まるで想像もしないマイルドの言葉に私は、絶句する。

 マーシェルが勘当? そんな話など私は聞いたこともなかった。


 ……そもそも、それならマーシェルは一体どこにいる?


 今更ながら、私はまるで想像もしていない事態に思わず固まる。

 だが、そんな私の思いをかけらもマイルドが配慮することはなかった。

 にっこりと笑みを貼り付け、マイルドは口を開く。


「そんなことより、我が家への融資について改めてお願いしたくてですね……」


 その瞬間、私は悟る。

 なぜ、マーシェルの存在を知る由もないマイルドが押し掛けてきたのか。


 ……こんな状況でありながら、侯爵家にたかるためだと言うことに。


 その事実に、私は怒りを覚える。

 こんな人間を相手にする為に、私は伯爵家に手紙を出した訳ではないのだ。


「何も知らないなら、帰ってくれ。その融資云々にも関心はない」


 その怒りを何とか押さえ、私はマイルドに言い放つ。

 しかし、マイルドには私の言葉など意味はなかった。

 私の反応を無視し、さらに近寄ってくる。


「いえいえ、私どもは家族同然ではありませんか。そんな冷たいことを言わないでください」


「……っ!」


 今はマーシェルがいない、それどころか勘当したと言い放ってなお、強引に距離を詰めてくるその姿に、私は顔をひきつらせる。

 あいていた扉の方向、そこから聞き覚えのある声。


「そこまでにしてもらいましょうか」


 ──コルクスの声が響いたのはその時だった。

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