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第七十話 責任の所在 (クリス視点)

 私の宣言に対し、少しの間コルクスは答えなかった。

 しかし、少ししてゆっくりと私の方に振り返る。


「……私は以前、お話ししませんでしたか?」


 そしてそう告げるコルクスの目には、隠す気のない怒りが浮かんでいた。

 その視線に怯んだ私へと、コルクスは続ける。


「──もう、マーシェル様に手を出すのはやめましょうと」


 その言葉に、私は思わず渋面を浮かべる。

 コルクスの言葉は真実だった。

 今まで私は、何度もマーシェルの居場所を探そうとしてきた。

 しかし、その度にコルクスに制止されてきたのだ。

 これまでの私は、コルクスに反抗することができず黙りを貫いていた。


「うるさい! 貴様がこの状況をどうにもできないからだろうが!」


 しかし、今日の私は違った。

 コルクスをにらみ返し、私はさらに叫ぶ。


「大体、このままでは侯爵家は終わりだろうが!」


「それは貴方のせいでしょう」


「……っ!」


 しかし、私が威勢良く言葉を吐いていられたのは、そこまでだった。

 コルクスは私の怒声に一切平静心を失うことなく続ける。


「使用人を失い、侯爵家の財産を横領され、挙げ句の果てに奥様にまで逃げられる。ここまでのことが起きても貴方はまだ理解できないのですか?」


 そう告げるコルクスの声には、隠す気のない呆れが浮かんでいた。

 そのことが怒鳴られるよりも苛立たしく感じ、私はコルクスを睨みつける。

 ……だが、正論だと理解しているが故に、私は反論することもできなかった。

 そんな私に、コルクスは淡々と口を開く。


「もっと冷静に考えてください。もう貴方が甘えられる存在はいないのですから」


 そう言うと、コルクスはゆっくりと立ち上がる。


「……まて、まだ話は!」


「いえ、終わりましたよ。私はこれから使用人と打ち合わせないとならないことがあります。クリス様も早くお休みください」


 それだけ言うと、私の制止を無視して、コルクスは部屋から出ていく。

 一人になった部屋の中、私は唇をかみしめる。


「……くそ!」


 使用人にここまで言われて反論できない屈辱に、私は唇をかみしめる。

 どうして何もかもがうまくいかないのか。

 せめてもの反抗として、私はコルクスの机を蹴り上げようとして。


「待て、これは」


 その上に一枚の封筒が置かれていたのに気づいたのはその時だった。


「……カインド伯爵家、だと」


 ──そこに記されていたのは、マーシェルの実家の名前だった。

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[一言] そういやおったな
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