表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/123

第六十六話 想像もせぬ攻撃

 目の前に立つアイフォード。

 その様子は明らかにいつもと違っていた。

 その目に浮かぶ隠す気のない怒りに、私はただ呆然と後ずさることしかできない。

 しかし、この狭い廊下の中でいつまでも逃げられる訳がなかった。

 すぐに壁に背中が当たり、私は下がれなくなる。

 動けなくなった私を、冷ややかな目で一瞥してアイフォードは口を開いた。


「それにしても随分勝手をしてくれたようだな」


「……それは」


 その言葉に、私はなにも言い返すことはできなかった。

 私は理解していた。

 自分のやったことが決してアイフォードに喜ばれる類のものではないと。

 計算を乱されたことに、アイフォードはさぞ怒っているに違いない。


 しかし、そう考えつつも疑問がないわけではなかった。

 それだけの理由だと考えるには、アイフォードの怒りが大きすぎる気がして。


 ……そんな風に、私が冷静に考えていられたのは、次のアイフォードの言葉を聞くまでだった。


「自分を捧げて生きている、か? 大層な言い分だな」


「っ!」


 その瞬間、私はようやく気づく。

 あのタイミングで出てきたならば、アイフォードがあの言葉。


 ……私の醜いあの自白を、聞いていてもおかしくないことを。


 一旦は危機を脱したことで私の中に生まれていた余裕が消え去ったのはその瞬間だった。

 呆然と私はアイフォードを見上げる。

 その心には、今までのアイフォードへの疑問など残っていなかった。


 ……あるのは、一番見られたくない部分を見られてしまったという羞恥心。


 この状況でさえなければ、私はこの場から逃げ出していただろう。

 それほどにあの自白は私にとって絶対にアイフォードには見せたくなかった部分で。

 故に私は、必死にいいわけしようとする。


「ちが、あれは……!」


 しかし、混乱した頭は私の願うような言葉を告げてくれはしなかった。

 意味のない羅列が、私の口から漏れる。


 ゆっくりとアイフォードが私の方へと踏み出したのは、その時だった。


「……っ!」


 どんどんと私の方との距離を詰めてくるアイフォード。


 殴られる。


 その姿に反射的にそんな考えが私の頭によぎる。

 次の瞬間、私は反射的に頭を庇う。


「え?」


 ……けれど、次の瞬間私の身体を襲ったのは痛みではなく、たくましい身体に包まれる感覚だった。


 なにが起きたのか理解できず呆然とする私の頭上から、アイフォードの声が響く。


「この、大馬鹿が……!」


 その声を聞いてようやく私は理解する。


 ──自分が、アイフォードに抱きしめられていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こんなに面白いのライトノベル久しぶりに読みました。本当に面白い!!先がとても気になります。更新楽しみにしています。
[良い点] ついに! [一言] 更新楽しみにしています
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ