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第五十四話 価値のある情報

 それから私がウルガに解放されたのは、深夜のことだった。

 足を痛めたこともあって、私の仕事ぶりがいつも通りな訳がなく、しかしそれをウルガが許さなかったのだ。


 しかし、自室へと戻る私の口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。


 今回ウルガから得られた情報は、あまりにも有益なものだった。

 というのも、眼帯禿頭というウルガが告げた証拠、それは私も知る質屋の面相によく似ていたのだ。

 もちろんそれだけであれば、有益な情報とはいえ、ここまで喜ばなかったかもしれない。

 だが、ウルガの苛立ちがさらに私が喜ぶ原因となっていた。


 あの様子を見るにウルガは何か眼帯禿頭にいらだちを覚えているのだろう。

 そして、私の知る質屋のその人は、決して怪しいものに手を出す人間ではなかった。

 つまり、ウルガが品物を持ち込んでもそれを預かるとは思えなくて。


 もしかしたら、そのことにウルガは苛立ちを覚えているのではないか。


 それこそが、私が考えた推測だった。

 もちろん、その確証などありはしない。

 だが、そんなものいらなかった。

 私の想像通りであれば、何の躊躇もなく証拠は手に入れられるだろう。


 ──また、もし私の想像の人間と違っても、協力的な可能性があるのだ。


 そこまで考えて、私は思わず笑みをこぼす。

 侯爵家の盗品を売ろうとしていた罪人を捕まえた、そういう名目であれば、もうどの貴族も迂闊に手を出してくることはないだろう。

 それどころか、侯爵家からの謝礼を狙って、王宮も積極的に動くに違いない。

 先代から、侯爵家が莫大な富を得ているのは、有名な話であるのだから。


 ……まあ、その謝礼も大分横領されているかもしれないが。


 もちろんこれは私の推測で、間違っている可能性もゼロではない。

 だが、それでも眼帯禿頭という言葉だけでメイリの調査は格段に前に進むだろう。

 そう考えてほほえんだ私は、ふとその場で立ち止まった。


「……自室に戻るより、待ち合わせ場所に行った方がいいかもしれないわね」


 そう呟いて私は、自身の足へと目を下ろす。

 この痛みを負うだけの価値がある情報を手に入れたのは確かだが、この足が不便なのは確かだった。

 おそらくメイリは、誰にも見られないよう早朝にやってくるだろう。

 だとしたら、今から休んで合流しようとすれば、遅れてしまうかもしれない。

 それなら、今から待ち合わせ場所に向かった方がいいだろう。


 そう考えた私は、方向転換して歩き出す。

 メイリと待ち合わせをしている、裏口に近い部屋の方へと。


 しかしそのとき私は気付いていなかった。


 ……そんな私を見る、複数の目が存在したことを。

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