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第五十三話 執拗な嫌がらせ

 私の嫌な予感、それは的中することになった。

 今日のウルガは、異常に執拗だった。


「あら、まだ汚れているわよ」


「……はい」


 そういいながら机に紅茶を注ぐウルガに、私は素直に従う。

 しかし掃除しながらも、私は考えずにはいられなかった。

 一体、こうして掃除するのも何度目だろうか、と。

 実のところ、こんな風にウルガが私に嫌がらせするのは珍しいことではない。

 ウルガは、私を侍らせる優越感を感じる為に、よくこうして仕事を増やすことがあった。


 しかし、そうだとしても今日に関してはどこか異常さを感じずにはいられなかった。

 ネルヴァがいないというだけではなく、何かもっと別のことに苛立ちを感じている様な。


「あんた、なにぼけっとしてるのよ?」


「……っ!」


 次の瞬間、私の足に痛みが走った。

 まるで想像もしていない激痛に、私は転がってその場から離れる。

 そして振り返ると、そこにいたのは私を睨みつけるウルガだった。

 その片足は宙に浮いていて、私はようやく自分が足を踏みつけられたことを理解する。


 ……それを目にしながら、私は今自分の身に起きたことが理解できなかった。


 ここまで直接的な暴力をウルガがふるうことは今までなかった。

 けれど、私の足に残るずきずきとした痛みが、私に教えてくる。

 これが、現実であると。


 私は未だ混乱しつつもいつもの様に反射的に謝罪しようとして。


「っ!」


 鋭い痛みが足に走ったのは、そのときだった。


 その瞬間、私の顔から血の気が引く。

 これは、歩くのに支障が出るたぐいの傷だと、私は反射的に悟る。


 ……そしてそれは、今から証拠を探そうとしている私にとって、あまりにも重いものだった。


 まるで想像もしなかった事態に、私は一瞬言葉を失う。

 それを見て、自分のしたことがネルヴァに散々止められてきたことだったと理解して、ウルガがばつが悪げに顔を背ける。

 しかし直ぐに、私を睨みつけ吐き捨てた。


「いい? それはただ自分がミスをして、転んだものにしなさい。アイフォード様や、ネルヴァに告げ口なんか許さないから」


 それは衝撃的な言葉だったが、しかしそれさえ私の中に入ることはなかった。

 胸にあるのはただ、これからの計画をどうすべきかという悩み。

 しかし、そんな私の胸の内を知るよしもないウルガは、いらだたしげに吐き捨てた。


「……これも、全部あの眼帯禿頭の行動が遅いからよ!」


 ──その瞬間、私は別の意味で固まることになっていた。


 眼帯禿頭、その言葉に私の頭にある記憶が蘇る。

 もちろん、確証はない。

 だが、もしその私の想像が合っていたとしたら。


 気づけば、私の口には小さな笑みが浮かんでいた。

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