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第四十九話 進まない事態 (アイフォード視点)

 明らかに挙動のおかしいネリア。

 その不審さに、俺はもちろん気づいていた。

 ……ただ、それを問いつめる時間さえ、最近はなかっただけで。


 肉体的に疲れた様子もないのに、募っていくネリアの心労。

 それは明らかに異常で。


 ただ、俺にはその大体の予想ができていた。


「……マーシェルか」


 この数日、体調を崩したという言い訳で一切会わない屋敷の客。

 その存在を思いだし、俺は苦々しく呟く。

 かつての侯爵夫人マーシェルと、その場を奪い去ったウルガ。


 その二人が屋敷内で会うことになれば、一体何があるか。

 そんなこと、想像するまでもなく俺は理解していた。

 だから、俺はできる限りマーシェルがウルガに会わないようにあらゆることを手配してきたつもりだった。


 ……だが、この状況を見るにウルガと、マーシェルに何かあったとしか思えなかった。


「くそっ! 何で今……!」


 そこまで考え、俺はそう吐き捨てていた。

 俺一人であれば、こんな事態いくらでも越えてきた。

 だから俺はこんなにも早く、準男爵という身分を手にすることができたのだから。


 ……だが、どうして絶対に刺激されたくない今の時期に、こんなやっかいごとが舞い込んでくるのか。


 自分の騎士団にウルガが駆け込んできたあの時を思い出し、俺は唇をかみしめる。

 あの状況では、俺にはこうして屋敷でかくまう風を装うことしか選択肢はなかった。

 いくら、それだけは避けたいと、そう思っても。


「……っ!」


 ままならない現実に、俺は血が滲むほどに唇をかみしめる。

 本当なら俺は、直ぐにマーシェルのところに言って、洗いざらい全てを吐き出させたかった。

 でも、それはできない。

 もし、俺がウルガのことをマーシェルに言ってしまえば。


 ……その時点で、俺がウルガの対処を失敗したときに巻き込みかねないのだから。


 だから、今の俺にできるのは一刻も早くその時がくるよう、動くことだけ。

 そして、いくら必死に動いたとしても、今の俺には限度があった。


「後一ヶ月。頼むから、無茶だけはするなよ……!」


 今の日付を目にし、俺は懇願に近いうめき声を漏らす。

 遅々として進まない事態。


 ……俺の孤独な戦いは、まだ始まったばかりだった。

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― 新着の感想 ―
アイフォードに憎まれたが故に使用人に身をやつしたと思ってるなら、ウルガはアイフォードのまえでこそマーシェルをこき下ろしそうなものを、一言も無しはさすがに不自然じゃないかしら。
[良い点] フラグがびんびん!
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