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第四十八話 孤独な戦い (アイフォード視点)

「……ふう」


 それはウルガが来てから数日経った頃。

 俺、アイフォードは隠し切れぬ疲労から、ため息をもらしていた。


「……数日でこれか」


 思い返すのは、うんざりするようなウルガとの会話。

 時間制限があると分かりつつも、俺は疲労を隠すことができなかった。


「本当に神経が削られる……」


 ウルガとネルヴァ、あの二人は決して鋭い人間ではない。

 けれど、それでも下手すれば大事件を巻き起こしかねない状態での綱渡りを続けるのは、精神衛生上決してよいとは言えなかった。


 ……特に、全てを味方にも隠してやらなければならない状況故に。


 ウルガという我が屋敷に入ってきたもう一つの爆弾。

 それに対し、俺は決して手をこまねいているだけではなかった。

 様々な伝手を使い、この状況を打開すべく動いていた。


 けれど、やはり準男爵でしかない俺には、いくらウルガがほの暗いところがある人間だとしても、対処に限りがあった。


「せめて後数ヶ月後に来ていれば、こんな苦労も……」


 そう告げて、俺は舌打ちを漏らす。

 とはいえ、そんなことを言ってもどうしようもない。

 俺にできるのは、一刻も早く解決できるよう手を回すことと、それを隠し通すことだけなのだから。

 それはほとんど耐えることに近く。


 ……それを俺は、味方にさえ伝えることができずにいた。

 

 ネリアには、正直伝えたかった。

 けれど、この状況で全てを打ち明けることはできなかった。

 少しでも、俺のやっていることがウルガにばれる訳には行かない。

 そのために、俺はネリアにも話を伝えることができず、それが胸のしこりとなっていた。


 何せ、ネリアは一番ウルガと接する立場だ。

 あのわがままなご令嬢に何を言われているやら、想像もしたくない。

 ウルガでは、ネリアが老婆であるということを考慮してくれるとも思えなかった。


 もちろんそのために俺は諸々の手を打っていた。


 まず、できる限り早く帰ってウルガの相手をしているのも、ネリアの休む時間を作るためだ。

 ネリアと直接的に話す機会はウルガとの会話で減っていたが、それでも逐一様子を見る様にもしていた。

 そのおかげもあるのか、ネリアが体調を崩しているようなそぶりを感じることはなかった。

 仕事ぶりも変わらず、疲れが溜まっている様子もない。


 ……ただ、そうして安心するには見逃すことのできない違和感があることに俺は気づいていた。


 俺は顎に手を当て、しみじみと呟く。


「──ネリアは一体、何を隠している?」

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