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第四十二話 惨めな女

「……は?」


 その私の言葉に、ウルガは呆然とした声を上げる。

 けれど、その一方で長らく侯爵家に仕えていたネルヴァの反応は別だった。


「その姿……。は、はは、そういうことか! 貴様、自分を恨んでいる相手に、惨めにすがりついたか!」


「……何を言ってるの?」


 疑問を顔に浮かべるウルガに、嬉々とした様子でネルヴァは口を開く。


「アイフォードを家督争いから追い出した張本人は、この女だと言うことですよ」


「だから一体なんの……」


 その言葉にウルガは、一瞬疑問を浮かべる。

 けれどそれは、埃まみれな私の姿を改めて見るまでの間だった。

 次の瞬間、ウルガは得心がいったようにその顔に嗜虐的な笑みを浮かべた。


「ふふ、うふふ! 惨めね、貴女? 何を差し出して、ここにおいていてもらってるの? 身体? それともこの惨めな姿?」


「……答える意味は感じません。……っ!」


 ぱん、という音と衝撃が私の頬に走ったのはその瞬間だった。

 反射的に頬を押さえた私に、対して嗜虐的な笑みをそのままに、ウルガは告げる。


「生意気な口を利くのはやめなさい。貴女はこれから私の使用人よ」


「……っ! お待ちくださ……」


 その言葉に、今まで呆然としていたネリアが口を開く。

 だが、私は彼女を制止して口を開く。


「……いいのよ。わかりました」


「ふふ、楽しい生活が送れそうだわ。とりあえず、その汚い格好は替えてきなさい」


「……はい」


 そう頷いた私に、ウルガは満足げに笑って、部屋の中に入っていく。


「ねえ、ネルヴァ。あの女なら、どれだけいじめても、アイフォード様の不興を買わないでしょう?」


 最後に、そんな会話を広げながら、私の目の前で扉は音を立てて閉まる。


「……ま、マーシェル様」


 後に残されたのは、私と青白い顔を浮かべるネリアだった。

 ネリアはその表情のまま、口を開く。


「私はなんてこと……」


「ネリア」


 しかしその言葉を、私は唇に指を押し当てて制止する。

 今の声が聞こえてもおかしくない状況で話す気は私にはなかった。

 だから、私は向こうを指さして告げる。


「とりあえず、私に新しい服をくれないかしら? ──使用人として通じるような」


「……しかし」


「いいから。そこでお話しましょう」


 そう言って、私はにっこりと笑って見せる。

 ある決意を固めた笑みを。

次回からウルガ視点、ネリア視点と移行する予定です。

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