表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/123

第三十三話 部屋の中にあったもの (クリス視点)

「……くそ! どいつもこいつも!」


 コルクスへの怒りが、我慢できず口から漏れる。

 どうしようもない苛立ちを抱えた私の足は、自然とウルガの部屋へと向かっていた。

 そもそも、この問題はウルガの責任なのだ。

 どうして私が責められなければならないのか。

 その苛立ちが私をウルガの部屋に向かわせていた。


「馬車の中でも、まるで自分が悪くないと言いたげな態度をとりよって……!」


 そう呟いた私の脳裏に、反抗的だった馬車の中のウルガの姿が思い出される。

 それを思い出した瞬間、私はどうしようもない苛立ちを感じ、ノックをすることもなくウルガの部屋の扉を開け放った。


「おい、ウル……は?」


 しかし、次の瞬間私の目に入ってきたのは、やけに綺麗な部屋だった。

 それに私は呆然と声を上げ……机の上に置かれた手紙に気づいたのはそのときだった。


「何だ、これは」


 どうしようもなく嫌な予感に襲われながら、私はその手紙を手に取る。

 そしてその中身を読み始め。


 ……次の瞬間、私の顔から血の気が引くことになった。


「……っ!」


 もはや土気色に近い顔色で、私は何度もそれを読むがその中身は変わることはなかった。


 ──ほかに愛する人ができました。さようなら。


「う、嘘だ……」


 呆然とした意識の中、そんな声が口から漏れる。

 しかし、私はそれが自分の声だとさえ気づいていなかった。

 ただ、ここに書かれていることが信じられず、私は呆然とその場に崩れ落ちる。


「あり得ない? あの、ウルガが? いや、これはただの夢だ」


 呆然とそうつぶやき、私はその場に崩れ落ちる。

 ちょうどそのとき、扉の外が騒がしくなり始める。


「……! そんな、囚人が………」


「……!? 探せ、どこかにいるはず……。一体誰がこんな……」


「……くれ! ここにあった調度品も消えて……!」


 その騒ぎに何かが起きたことが分かる。

 そう理解しながら、もう私には立ち上がる気力さえ存在しなかった。


「どう、してこんな……」


 ウルガを屋敷に迎え入れ、全ての人間に認められる未来。

 かつて夢想していたその光景を想像しながら、私は呆然と呟く。


「どうして、こんなことになった?」


 その答えはもう目の前に置かれているのに。


 ……それさえ受け入れられない私は、呆然と座り込むことしかできなかった。

次回からマーシェル視点に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 侯爵家から家財持ち逃げ しかも犯罪者と共に 普通にお尋ね者やん
[一言] 脱獄幇助に盗みと普通に指名手配されるやつじゃないですか… 確か捕まってるやつも貴族でしたよね?
[一言]  愛人が間男と窃盗働いてトンズラとかウケる。クリス君に再起の機会はあるのかッ!?(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ