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第二十話 すれ違い (クリス視点)

「……違う! 私は!」


 そう理解しながらも、私はその事実を受け入れることができなかった。

 必死に、私はコルクスへと声を張り上げる。


「私は必死に書類だって、あの難易度の高いものを……」


「奥様様はそれを常にやっておりましたよ。それも役に立たない当主の代わりにね」


 そう告げるコルクスの目はただただ冷え切っていた。


「そもそもクリス様が、ただ当主の許可を出せばいいだけの書類しか処理しなくてもどうにかなった理由が分かりますか? それもすべて、奥様が代わりに処理してくれていたからです」


「……それ、は」


 その言葉を言われ、私は気づく。

 そもそもネルヴァの言っていたマーシェルがサボっていたなどあり得ないことを。

 その時になって、私は理解せざるを得なかった。


 自分は、ネルヴァ達に踊らされていたにすぎないことを。


「ようやく理解できましたかな? 一体どれだけ取り返しのつかないことを貴方がしたかを」


 その時には、私も理解していた。

 どれだけ、マーシェルを追い出したということが侯爵家にとって、大きなことだったかを。


「……違う。悪いのは説明もなく消えたマーシェルだ!」


 しかし、そう理解しながらも私は認めることができなかった。


「こうなるんだったら、もっと説明すべきだった! そうに決まっている」


 そう私が叫ぶ度に、どんどんとコルクスの表情から温度が消えていく。

 また、私も自分がどれだけ自分勝手なことを言っているのか、理解していた。

 それでも、認めることができる訳がなかった。


 ……認めてしまえば、私がただの無能だと言ってることになると理解しているが故に。


「ネルヴァの横領でどれだけの被害が侯爵家にでたか、分かって言っているのですか? もうすでにどれだけの品がネルヴァによって売り払われたかも分かっていないのに?」


 そんな私を見るコルクスの目は、冷え切っていた。


「……そんなもの、取り返せばいいだけだ」


「まともな使用人さえ追い出したのに、ですか? ──もしかして、公爵家との交易があればなんとかなると考えているのですか」


「……は?」


 そのコルクスの言葉の意味、それを私は理解することができなかった。

 しかし、そんな私にコルクスは顔に怒りを浮かべながら口を開く。


「言っておきますが、公爵家との交易は途中段階で奥様が消えているのですよ。そんな状況で成功を……」


「……待て! だからそれはなんの話なんだ?」


「……は?」


 次の瞬間、コルクスの顔から表情が抜け落ちることとなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もう、この国でクリスト名付ける親がいねーじゃね? 英国王室もジョン(ジョン王は失地王の一人だけ)と名付けることないし… ジョン王は兎も角、就任して僅かの間に侯爵家を没落させた阿呆と一緒の名前…
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