表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/123

第十八話 扉の先にいたのは (クリス視点)

「ま、待て。何かの間違いじゃないのか?」


 私はかすれた声で、咄嗟にそう口を開く。

 その声に反応し、一瞬コルクスはこちらを向く。

 しかし、直ぐにコルクスはその顔を正面に戻した。


「それも直ぐに分かります。……扉を蹴破れ」


「はい」


 次の瞬間、コルクスに命じられた一人の衛兵が扉を蹴りつける。

 そして、次の瞬間けたたましい音を立てて、扉が大きくあけ放たれた。


 ……あけ放たれた扉からのぞく部屋にいたのは、談笑していた様子のネルヴァとその取り巻き達だった。

 突然のことにネルヴァ達は呆然とこちらを見ていている。

 しかし直ぐに、その顔に怒りを浮かべ口を開き始めた。


「な、なんだ!?」


「この部屋が誰のだと」


 つかみかからん勢いでコルクス達の方へと詰め寄っていく、ネルヴァ達。

 しかし、そんなネルヴァに対するコルクスの言葉は淡々としていた。


「犯罪者だ。気にせず捕らえろ」


「はっ」


 それからの衛兵の動きは早かった。


「やめろ! さわるな!」


「私をいったい誰だと……!」


「黙れ!」


 騒ぐネルヴァ達を無視し、どんどんと捕らえていく。


「わ、私は侯爵家の女主人よ! さわらないで!」


 ……その最中、ここにいるはずのない声が聞こえたのはそのときだった。


 呆然と顔をあげると、そこにいたのは私の妻であるはずのウルガだった。

 なぜここに、そんな思いが私の胸に浮かぶ。

 そして、それはコルクスや衛兵達も同じだった。


「……どうしてここにウルガ様が?」


「そんなこと、私の勝手……」


 ウルガが私の存在に気づいたのは、そこまで言い掛けた時だった。

 瞬間、ウルガは一目散にこちらの方へと向かってくる。


「旦那様、これはどういうことなのですか!」


「……いや、それは」


「私が次期家宰に相談事を持ちかけている最中に、こんなことをされるなんて! 一刻も早く、次期家宰を解放するよう言ってください!」


 その言葉に、私の胸に一瞬躊躇が生まれる。

 何せ、実際に何か証拠があった訳ではないのだ。

 それにも関わらず、こうして捕らえるコルクス達の方が異常なのではないか、そんな考えが私の脳裏に浮かぶ。

 けれど、そのときに至っても、コルクスは冷静そのものだった。


「その必要はございません。この罪人どもが次期家宰など、絶対にありえない未来なのですから」


 そういって、コルクスはゆっくり歩き出す。

 今まで痛みにもだえていたネルヴァが顔をあげたのはそのときだった。


「……っ! お前!」


 しかし、衛兵に捕らえられたネルヴァが動けるわけがなかった。

 ゆっくりと部屋にある一つの椅子の前に立ったコルクスは、その座面を持ち上げる。


「なっ!」


 ──そこにあったのは、侯爵家が代々受け継いできたはずの財宝の数々だった。


 それを目にし、何も言えなくなった私にコルクスは告げた。


「これがその証拠です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 侯爵家の侍従として勤めるなら、当然としてそれなりのコネ(推薦状)が無いと無理です。 で、そのコネ(推薦状を書いた人)には、推薦した者が問題を起こした時に連帯責任を負う覚悟がいります。 つまり…
[気になる点] 横領した財宝を、自室に隠す、、だと?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ