第十七話 乱入者
久々の更新になり申し訳ありません!
まるで想像もしない乱入者に部屋の空気が完全に固まる。
そんな中、何とか声を上げたのはマイルズだった。
「せ、セルタニアお嬢様、私が迎えに行くまで馬車を出ないようにと……」
「うるさい! これだけ待って合図が来ないから、私が来て上げただけじゃない!」
……そのやりとりを聞き、私はマイルズ達の狙いをようやく理解することになった。
即ち、マイルズ達の目的は最初から私から、アイフォードを奪うことだったのだと。
その私の想像を裏付けるように、満面の笑みのセルタニアはアイフォードに近づいていく。
「そんなことより私、以前から私アイフォード様のことをお慕いしていて……」
露骨きわまりないそのすりよりかたに、アイフォードは顔をゆがめ冷たく吐き捨ている。
「近寄らないでくれないか?」
「そんな冷たいこと言わないでください!」
しかし、その程度でセルタニアが下がる訳がなかった。
その顔にこびた笑みを浮かべ、セルタニアはアイフォードにすり寄っていく。
私が一歩踏み出したのはその瞬間だった。
「いっ!」
次の瞬間、ぱんっ! と小気味良い音が響き、セルタニアが赤くなった自身の頬を庇う。
私に向けられたその目に浮かぶのは、信じられないと言いたげな驚愕。
それに少しの心地良さと……それを埋め尽くす闘志を露わに私はにっこりと笑ってみせる。
セルタニアの頬を打った手を、これ見よがしに目の前に突きつけたまま。
「不肖の妹だと思っていたけれど、本当に伯爵家の品位がよくわかる立ち振る舞いですこと」
かつ、かつ、とあえて高らかに足音をたてながら私はセルタニアの前へと歩いていく。
前にも言った通り、私は別に実家などどうなっても良かった。
この屋敷に関わらないでくれるなら、滅びようとも、繁栄しようがどっちでもよい。
そんな風に考えていた。
……そう、伯爵家がアイフォードの誘惑を考えていると知るまでは。
そっちがその気だと言うなら、私の逆鱗に無遠慮に触れてくるというのなら。
いいだろう、こっちも全力でやってやる。
「これもわからないとは思ってもいなかったけどーーこの人は私の夫よ。汚れた手で触れないで貰えるかしら?」
それははじめて私が、私怨から伯爵家と相対することを決めた瞬間だった。
明日、10月30日にコミカライズ契約結婚のその後発売になります!
今後も不定期な更新になると思いますが、よろしくお願いいたします!




