表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/123

第十一話 不信感 (クリス視点)

 執事の言葉に気をよくし、それからも仕事を続けていた私だが、その優越感を燃料として動けたのは、それから一ヶ月の間だけだった。


「……どういうことだこれは」


 そうつぶやく私の前にあったのは、一ヶ月前より増えた書類の山だった。

 そう、一ヶ月前から私が必死に仕事を行ってきたにも関わらず、仕事は減るどころか増えていたのだ。

 もちろん私も対策としていろいろな手を打った。

 執事に訊き、さぼっていると思わしき使用人達を叱りつけ、仕事を押しつけ、または使えない使用人をクビにして新しい使用人を入れたりもした。

 にも関わらず、相変わらず減る気配のない書類に私はさすがに異常を感じずにはいられなかった。

 どういうことかと、私はいつもの執事に尋ねようとして。


 ……その執事の姿がないことに気づき、舌打ちを漏らした。


「くそ、ネルヴァはどこに行きよった……!」


 ネルヴァはマーシェルの不手際について私に教えてくれた執事だった。

 今は家宰のコルクスがいないこともあり、実質侯爵家をまとめる役目も担っている。

 当初、私を全面的に尊敬しており、侯爵家内部のあれこれを教えてくれたそのネルヴァを、私は役に立つと思っていた。


 ……しかし、その考えも最近は揺らぎつつあった。


 その理由は、減ることのない書類だけではない。

 最近、ネルヴァがどこにいるのか分からない時が続くことにあったのだ。

 それも、こんな忙しい時にだ。


 そこまで考え、ふと私は思いいたる。

 そういえば、最近妻であるウルガもどこか様子がおかしいことを。

 そこまで考え、私は余計な考えは今は必要ないと頭から振り払った。

 とにかく今は、目の前のこの書類の異常を探ることが最優先なのだから。


 そう考えた私の目に入ってきたのは、侯爵家にいるもう一人の執事だった。

 黙々と仕事を処理していくその姿からは、陰気な雰囲気さえ感じられ、私は思わず顔をしかめる。

 この男には以前ネルヴァがさぼっていると仕事を増やしていたのを見たが、その時でさえこの淡々とした様子を崩すことはなかった。

 その様子を見てから私はこの執事に対してコルクスと似た苦手意識を持っていた。


 だから、普段であれば私はこの男に声をかけることをしなかっただろう。

 けれど今、私はネルヴァに対して不信感を抱いていて、それが私の背を押した。


「おい、お前。この書類の量はどうなっている?」


 ……その私の声に反応し、顔をあげた執事の顔に浮かんでいたのは、隠す気のない侮蔑だった。

日刊総合一位、本当にありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  いよいよ解らせられる時が‥‥‥!
[気になる点] 更新楽しみに読ませていただいております。 >この男には依然〜 は、「以前」ではないでしょうか? 間違えでしたら申し訳ございません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ