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第十話 伯爵家という存在

 アイフォードが私の同席を認めた後、一旦今日はそれだけとして私達は解散した。


「マーシェル様の実家ですか……」


 そして、私からの報告を聞きいたメイリが浮かばない表情で口を開いたのはその日の夜。

 私達とコルクスの会話が終わった後のこと、私の部屋でのことだった。


 私はうんざりとした感情を隠そうともせず告げる。


「あの人間達よ。絶対に家に押し掛けてくるに決まってるわ」


「初期に関しては侯爵家にやってくることもありましたものね」


「……こういう時の行動力を考えれば、数日中にはやってくるでしょうし」


 そう言いながら、私はため息をつきたい衝動に駆られる。

 我が一家ながら、あのがめつさはなんとかならないのだろうかと。


「とういうことは、今回は私は情報を探しに行かない方が良いのでしょうか?」


「そうね。有事の際にメイリがいない方が嫌だし、今回は屋敷に残ってもらおうかしら。……それに、基本的にはアイフォードに任せていれば問題ないと思うわよ」


「……そう、ですね。アイフォード様ならその辺りそつなく対応されそうですもんね」


「ええ。だから私は本気でそのサポートくらいに……て、さっきからどうしたの?」


 そう言って私が目を向けると、目の前にいるメイリの顔には過剰な位の心配が浮かんでいた。

 何かと身構える私に、その表情のままメイリが口を開く。


「……マーシェル様、本当に大丈夫ですか? 侯爵家にいた頃は、あれだけ嫌がっていたのに」


 その言葉に、私は驚愕に目を見張っていた。

 今になって私は、実家と対峙するにも関わらず何の感情も抱いていない自分に気づくこととなった。


 実家、それは私にとってトラウマの塊だったが故に。


「……あれ、本当だわ。何で私、こんな平気なんだろう?」


 その疑問に私はそう呟く。

 その瞬間、脳裏にかつての実家の記憶が蘇ってくる。


 それは美貌の才女と呼ばれていた母が死んで数ヶ月も経たない頃、私の継母に当たる女性と、その子供を父がつれてきた記憶だった。

 私の生活が一瞬で変わったのはその時だった。


 それから、私は義妹と比較され、虐げられ使用人のような生活を送ることになった。

 唯一の救いといえば、私に母から受け継いだ領地経営の才能があったことか。

 それがあった故に、私はそんな状況でも自分の価値を示すことができた。

 必死に役に立ち続ければ、いつか愛されるなんて幻想にすがることができた。


 ……それも、マイルズという家宰が現れるまでだったが。


 領地経営の知識などなく、それでも口のうまいマイルズを父は痛く気に入った。

 どれだけその男の言っていることが夢物語といっても、父は聞く耳を持たなかった。

 これ幸いと義妹たちも私への攻撃を始めて……クリスが解放してくれなければ、私はそのまま地獄のような日々を送っていただろう。

 そのことだけには、クリスに感謝している。


 ……それほどに、伯爵家という存在は私にとって忘れることのできない恐怖の場所だった。

 連日更新が遅れており、申し訳ありません…!

 実は少し話を練りながら更新するのがきつく、次回から二日に一回更新となると思います。

 申し訳ありません……!

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