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第二話 死刑宣告

 クリスが屋敷に来た日から、今はもう数週間の日々が経っていた。

 その間には、本当に様々なことがあった。


 屋敷内のことでいえば、私が風邪を引いたことや、帰ってきたメイリに久々に特大の雷を落とされたこと。


 また、貴族社会的なことに関しては、侯爵家が没落寸前の状態となったこと。


 そして、両方の要素が含まれることとしては、この度正式にアイフォードが騎士団長となり──私と婚姻を結んだこと。


 クリスとの一件から、そんな様々なことがあり、私は一つある決意を下したのだ。

 アイフォードへの恋心を隠すことをやめようと。

 それは、私にとって大きな決断で、けれど私はそのことについては一切後悔はしていなかった。

 アイフォードの恋心を成就させよう、そう決めてから私は初めて前に向かって進めている実感があった。

 クリスの時や、実家の時とは違う、自分の人生を歩んでいる感覚。

 それは私にとって、貴重かつ新鮮なもので、この決断に至る全ての人物に対して私は感謝していた。

 それはアイフォードや、コルクスだけではなく、クリスや実家の人間にまで。

 そして、もちろんメイリやネリアにも大きな恩と共に感謝を感じていて。


「この飾りとか似合いません?」


「あら! きれいな金髪だから映えるわ!」


 ……しかし今だけは、その感謝をおいておいて逃げ出しても許されないだろうか?


 あれから、数十分。

 あらゆる衣装を着せかえされた私は、一生分の服を着た錯覚を胸に、虚空を見つめていた。

 試しと説得された露出度の高い衣装を着せられたこともあり、羞恥はかなりましになった。

 だが、今度は全然終わることのない着せかえに、私はされるがままになっていた。


「この位控えめなら、浮きませんよね?」


「ええ。それに、きちんとかわいらしいから効果は間違いなくあるわ!」


 楽しげに私を挟んで会話するメイリとネリアを死んだ瞳で見つめながら、私は改めて思う。

 ……やはりあの時、メイリに相談するべきではなかったと。


 こんな着せかえが始まった経緯、それは相談する人が思いつかずメイリに恋愛相談してしまったことだった。

 というのも、本当は恋愛相談などする気は私にはなかった。

 なぜなら、まだメイリは休暇中で顔を見せに屋敷に来ただけだったのだから。

 いくら信頼しているメイリが相手でも、休みに相談ごとをして仕事を増やす気は私にはなかった。

 けれど、めざといメイリに変化を見抜かれ、聞き出されるままにアイフォードへの気持ちを漏らしてしまって。


 それが現在の経緯だった。


「後は、これはどうかしら?」


「まあ、とても綺麗だわ!」


 もはや、私はただ為されるがままになりながら、望む。

 早くここから解放されることを。


「まあ、こんなところかしら」


「マーシェル様、とてもお綺麗になりましたよ!」


「……っ!」


 そして待ち望んでいた瞬間がきたのはその時だった。

 笑顔のメイリとネリアの言葉に、私は反射的に笑顔を浮かべ。


「それじゃ、アイフォード様のところに行きましょうか」


「……え?」


 ──次の瞬間、メイリの無慈悲な死刑宣告に笑顔が固まった。

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