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第一話 痛恨のミス

「そ、そのメイリこれ、変じゃないかしら……」


 そう私がおずおずとメイリに話しかけたのは、自室でのことだった。

 困惑を隠しきれない私が現在身につけているのは、美麗なドレスだった。

 もちろん美麗と言っても、パーティーなどで着るような華美なものではない。

 しかし、普段は質素で動きやすいドレスを好んで身にまとっていた私からすると、十分に落ち着かないもの。

 居心地の悪さに耐えかねて、私はそのそのドレスを脱ごうとする。


「いえ、全く変じゃありませんから、勝手に脱ごうとしないでくださいマーシェル様」


 しかし、その私の行動はメイリによって即座に制止されることとなった。

 恨みがましく私は涙の滲んだ目で睨むが、その視線にメイリが動じる事はなかった。

 それどころか、これ見よがしにため息さえついてメイリは口を開く。


「はあ、少しは成長したのかと思いましたが、全くですね……。そんなので、アイフォード様を射止められると思っているのですか?」


「……う」


 その言葉に、私は言葉に詰まる。

 というのも、そもそも恋愛相談をしたのは私の方であるのだ。

 それに、ようやく帰ってきたメイリに対し、休むのも早々に私の私事に付き合ってもらっているという事実。

 もう少し素直に話を聞くべきかと、私は思い直しかけて。


 ……扉の外から鼻歌と共にノックが響いたのはその時だった。


「っ! えっと、今は……」


 上機嫌を隠さないその鼻歌に嫌な予感を覚えた私は、反射的に入室を禁じようとして……その前にメイリが口を開いた。


「はい、どうぞ」


「失礼しますね、マーシェル様」


 そのメイリの許可に反応し、部屋に入ってきたのは上機嫌を隠さないこの屋敷の老婆の使用人、ネリアだった。


「メイリ、言われた通りに衣装を片っ端から集めてきましたよ」


「ありがとうございます、ネリアさん」


「いえいえ、あの質素なマーシェル様がおしゃれをするんです。これくらい何のことでも」


「本当に、マーシェル様は元がいいのにおしゃれにまるで無関心ですから!」


 そう嬉々と話ながら、ネリアとメイリはドレスを物色し始める。

 そのドレスの中に、私が見たこともないような露出度の高いものまであって、私の顔から血の気が引く。


 その時になって、私は気づく。

 ……安易に恋愛相談する相手にメイリを選んだのは、色々早まったかもしれないと。


 数分先に始まるだろう羞恥の着せかえショーを想像し、私の頭の顔は更に赤く染まる。

 どうしてこんなことになったのか、と呆然と私が今までの経緯に思いを馳せたのは、その時だった。

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