コント「ユウシャ、決断する」
舞台…RPGの世界
配役…ユウシャ=ボケ 魔神=ツッコミ
RPGの世界。舞台上手にゲームのラスボスである魔神が立っている。舞台下手から大きな袋を持ったユウシャが現れる。
魔神 「何者だ?」
ユウシャ「私はお前を倒しに来た、ユウシャだ!」
魔神 「自分で勇者を名乗るとはいい度胸だ」
ユウシャ「魔神め、覚悟しろ!お前を倒し、平和を取り戻す!」
魔神 「無駄なことを…ほれっ(右手を上げる)体力を回復してやったぞ。万全の状態で来るがいい」
ユウシャ「その余裕がいつまで続くかな?この袋には伝説の武器が入っている。この武器を出す時がお前の最期だ!」
魔神 「せいぜいあがくがいい。準備が整うまで待ってやろう」
ユウシャ「待ってろよ。(袋をあさる)どの武器にしようか?使い慣れた剣…一撃必殺の槍…絶大な魔力を秘めた杖…」
魔神 「ずいぶん用意したな。無駄な努力を…」
ユウシャ「手数を誇るナイフ、全体攻撃できるブーメラン、遠くから狙える弓…」
魔神 「…まだあるのか?」
ユウシャ「鎌、ムチ、かぎ爪…」
魔神 「ストップ、ストップ!どんだけ持ってきたんだお前!?」
ユウシャ「あれ?お前そんな喋り方だったか?」
魔神 「しんどいから素に戻すわ。その袋にどんだけ収納してるんだよ?」
ユウシャ「まだあるぞ。当たったためしがない斧」
魔神 「そんなもの持って来るな!」
ユウシャ「持ち上げるのがやっとのハンマー」
魔神 「よくここまで持ってこれたな。ご苦労さん!」
ユウシャ「あたり一帯を焼け野原にする爆弾…」
魔神 「もはや武器じゃなくて兵器!多すぎだろ」
ユウシャ「そんなことはない。これでも半分に絞ったんだ」
魔神 「それならハンマーなんか持って来るな!」
ユウシャ「さて…どの武器で挑もうか?剣もいいけど、槍も捨てがたいし…」
魔神 「おい、早くしろ」
ユウシャ「せかすな。準備が整うまで待つって言っただろ?」
魔神 「にしても!私も忙しいんだ。この後、姉を迎えにいく約束をしている」
ユウシャ「あぁうるさい!気が散ったから、選び直すわ。使い慣れた剣…」
魔神 「ふざけるな!たかが武器選びでどんだけかかるんだ!」
ユウシャ「別にいいだろ!初めての挑戦なんだからさ!」
魔神 「えぇ~…逆ギレ?」
ユウシャ「こっちだって命がけでやってんのに…そんなにギャアギャア言わなくたっていいじゃないかぁ(泣く)」
魔神 「情緒不安定すぎる…(優しい声で)まぁ、そんなに慎重になるな。勇者なんだから、負けてもまた挑むんだろ?失敗しても、次があるじゃないか」
ユウシャ「いや、次なんか無い!オレももう今年で42歳、あとがないんだ!」
魔神 「厄年!?けっこう歳いってるな」
ユウシャ「ここまで来るのにずいぶんかかった。まず冒険に出るかどうかで8年悩んで」
魔神 「悩みすぎだ!」
ユウシャ「周りの奴らに、“優柔不断な者”略して“優者”ってバカにされて」
魔神 「ユウシャってそっち!?“勇気ある者”略して“勇者”じゃなくて?」
優者「もうあとがないんだ!魔神と戦う決心がつかなくてさらに14年。そのへんのザコを倒してウロウロするだけの生活。周りからは不審者扱いされてる!昨日だけで2回職質された」
魔神「武器持ってウロウロするからだ!」
優者「こうなったのも全部、お前のせいだ!」
魔神「優柔不断のせいだろ!いいからさっさと挑め」
優者「よし!」
魔神「やっと決めたか?」
優者「アミダで決めよう」
魔神「運任せ!?」
優者「待ってろよ(床にアミダを描く)このアミダが完成する時がお前の最期だ!」
魔神「いや、全然怖くない…ってか、我が城のフローリングにアミダを描くな!」
優者「どれを選ぼうか。あー決められない!頼む、選んでくれ」
魔神「私が!?こういうのを敵の手にゆだねるな…右から2番目!」
優者「右から2番目だな(アミダをなぞる)よし、剣だ!」
魔神「結局最初に選んだヤツ」
優者「うわっ剣の隣、ハンマーだった!ハンマーじゃなくてよかった~」
魔神「そう思うなら持って来るな!」
優者「じゃあ他の武器は…(袋を投げ捨てる)」
魔神「おい!何捨ててんだ!」
優者「いや、手元にあると“やっぱあの武器にすればよかったなー”って思っちゃうから思い切って」
魔神「どこで思い切ってんだ!雑に扱うな!まだ間に合うから取りに行け…」
(爆発音)
魔神「爆発しちゃった!?伝説の爆弾なんか入れるから…と、とにかく剣でいいんだな?」
優者「ああ、武器は決めた…が」
魔神「が?」
優者「オレなんかが魔神に挑んで大丈夫だろうか…」
魔神「おい、いいかげんにしろ!」
優者「よし!後日改めて来るその時が、お前の最期だ!(立ち去る)」
魔神「延期するな!」