俺と彼女の秘密の関係
新学期が始まり2年生に無事進級できた俺、七海 拓人はこれから一年間勉強に励む教室へと向かっていた。
桜の舞う外廊下を抜け教室のある棟に入ると、真新しい制服を着た生徒達が自分の教室を見つけようとウロウロうろうろ。すでに自分の教室を見つけた奴らはすぐに友達を作り会話に華を咲かせる者や携帯とにらめっこしている者に分かれる。自分は当然後者だった。教室に入ったら席につき静かに待機って手引に書いてあったからな!
自分が新入生だった時を思い出しながら2階に上がりようやく目的の教室についた。1年の時に同じクラスだった奴や名前もわからない者など、中に入ると彼らから視線が来るもののそれは一瞬で無くなりすぐに会話を続ける。俺は黒板に貼り出された席順の書かれた紙を見ながらつぶやいた。
「一番後ろか…」
一番後ろの窓際の席、俺は最高の席を手に入れる事ができた。内心大喜びである。
自分の席に座り一息ついていると前の席の男から声をかけられる。
「また同じクラスだね!拓人」
「隆二、居たのか」
「おい!君のたった一人の親友だよ、教室入った時に気づいてよ」
永山隆二、中学からの腐れ縁で本人曰く俺の親友らしい。
「なんかすごい失礼な事考えてない?」
そっちこそまるでお前しか友達がいないみたいな言い方じゃないか!失礼な奴だ、まぁ事実だけど。
考えてない、考えてないと手振り首振りで示す。
「まったく、それよりあの話聞いた?」
「あの話?どの話だ」
だから…と隆二が話そうとした時、戸が開く音と共に中に居た生徒が今しがた入ってきた生徒に一斉に駆け寄る音が聞こえてきた。
「噂をすればだね」
なるほど、隆二が言っていたのは彼女の事だったのか。
「神笠さんおはよう!同じクラスになれて良かった〜」
「おはようございます橘さん、また一年間よろしくね」
「自分、大野将人っていいます、よろしくお願いします!」
「大野さん、よろしくお願いしますね」
彼女は神笠 茉莉、艶のある長い黒髪に美しい容姿に大和撫子な振る舞い。
勉強、スポーツも完璧にこなし、そんな彼女の周りには自然と人が集まる。当然そうなると告白する男も多いわけだか今のところすべて断っているらしい。
「凄い人気だよね、神笠さん」
そうだなと返事をする代わりに、スマホを取り出しゲームアプリを起動する。
「興味ない?神笠さんの事」
「ただのクラスメイトくらいにしか思ってない。俺とは住む次元が違いすぎる」
あんなコミュ力の塊とコミュのコの字もない俺じゃあ接点がなさすぎる。話かけた瞬間に取り巻き達に睨まれて終わりだ。
「拓人らしいね。そんなんじゃ友達できないよ」
「お前だけいてくれたらいいよ」
「その言葉は友達じゃなくて彼女にいってあげてね」
スマホをいじりながら隆二と何気ない会話をしていると、隆二が思い出したように話しだした。
「そういえば、神笠さんのおもしろい噂話があるんだよね」
「…どんな噂だ?」
また神笠の話かとたいして興味はなかったが、スマホを置き隆二の目をみて話す。
「3年の先輩が神笠さんにしつこく告白したらしいんだよ、そしたら神笠さん断りの最後にこう言ったんだって」
「(私、婚約者がいますので)って」
「…本当かそれ?」
「その先輩も卒業しちゃったし今となっては確かめようがないよね、まぁ噂話だし内容も内容だしあまり信じない方がいいね」
なんだそれと思っていると担任が教室に入ってきて、入学式の行われる体育館に移動するようと伝える。教室にいるクラスメイト達はその声を聞くと次次と移動を開始し始める。
「僕たちも移動しようか」
「そうだな」
俺は重い腰をあげ体育館へと向かう。
その後ろ姿を見つめる女子生徒の視線に俺は気づかなかった。