依頼56『ハイネウスの走馬灯⑦』
そして、私は溺死した人間を捨てた後、アメナガスの手を取って暗殺者のアジトへと向かった。
私は殺す相手を見つけてくれるという事だ。
私にとっては取り敢えず私怨のある人間を殺す日々。
そして、遂に殺してやりたいと思えるようになった。
そんな日に殺す相手を選ばれるというのはどういうものなのか……もしかして道を間違えたと思っていたけど
目の前に尽くしたい人間がいた。
目の前に愛したい人間が。
人を殺す事を是としているプロがいた。
殺す事で生きている人間がいた。
大切な家族の為に殺す人間がいた。
そして、ロメイトという愛すべき人間。
私の大切な人間。
そんな人がいた。
彼女は大量の絶望した人間の表情を集めていた。
ロメイトは言った。
「芸術だよ! とってもきれいな芸術! ああ! 美しいって思わない! こんなに大切な!」
そう言ってウットリとした表情で私を見つめていた。
私は嬉しいっと思いながら彼女の作品を見て
「とても綺麗ね、私も思うわ」
と言ってロメイトに抱き着いた。
ロメイトは嗤いながら
「あははあはああ! とってもいいねえ! ハイネウス! 次はだれを殺そう! 誰を絶望させようか! 私の手で作りたいから貴方の能力で溺れる瞬間の絶望の作り方教えて! ねえねえ!」
「いいわ! 貴方にとっていい経験になる! そうきっと! わたしをその為に利用しても良いわ!」
「うんうん! 良きかな良きかな!」
そして、嬉しそうにしながら私に抱き着いた。
私は幸福感でいっぱいであった。
イナミちゃんは暗殺者ではあったが可愛かった。
とっても安心させるマスコットの様な存在であった。
彼女はきっと一番女の子らしい
女性としての興味がいっぱいあるんだろう。
彼女曰く
「暗殺者は……必ず一般の事も学ぶ必要がある……だってそれは……暗殺者は紛れる者だから……だから学ぶ必要がある……」
そう言って私に女の子として必要な事を学ぼうと。
化粧やおしゃれを学んでいた。
とても嬉しかった。
ノリアはプライドが高かった。
「ええ? 私は飯食えたらいい、だってすでに可愛いんだもん、それにクールだ、クール系は化粧をしない方が良い、貴方には悪いけど私の考え方を変えるつもりはない、まああんたの化粧は悪くないと思うよ、とても素晴らしいからそれは必要としている人にしてあげて」
と言って化粧を拒否した。
でも仲間だから我慢しようと思ったけど、本当に彼女は強かった。
どんなことをしても生きようという思いが強かった。
そして、化粧に興味がないのはただの性格でそれは可愛いものだと思った。
だって傲慢ではあるけど、性格なら仕方ない、ただ私の化粧を利用して、努力しているアピールをしている人間よりかは必要ないと蹴って貰った方がまだマシだ。
そして、妹のノリアととても仲が良い。
ノリアはとても姉が大好きであった。
私はノリアはとても生意気な子だと思っていたけど、彼女なりのコミュニケーションだと感じた。
私はそんな彼女も家族の様に思っていたけど
「え? 私の家族はお母さんとお父さんとナリア姉だけだよ、他はただの仲間か友達か他人だよ? 何? 貴方家族だと思ってたの? 止めて、引く」
と言われてしまった。
生意気だと思ったけどそれは彼女の思い出あり、大切な考え方であった。
アメナガスは同じく妹思いで何処か陰がある。
だけどその影が私を引き付ける。
彼女は
「え? 化粧? まあしても良いけど……金掛るなら妹に使いたいからあまりなあ」
と遠慮するタイプであったが、結構無理矢理化粧をしたりして楽しんだ。
全てが愛おしく思えてくる、それが壊されるという事はとてもとても許せない
どうして死にそうなの私は?
許せない、壊しやがって、許さない! 絶対に絶対に許さない!!
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ハイタッチしたランチェルは何とか倒せた暗殺者を背に思った
(良かった、何とか倒せた、誰も犠牲を出さずに)
その喜びに浸っていると
グサ!
「!!」
足に激痛が走る。
そして、嫉妬という文字が現れた。