依頼48『血の』
啓示達は暗殺者の一人の唯一の手掛かりである、潰された教会へと向かった。
そして、その場所は殆ど廃れた屋敷になっていた。
そして、異臭の匂い、中に入ると大量の頭蓋骨が転がっていた。
形からしてまだ子供であろう大きさの骨もある。
リストアは
「死んで何年か経った臭いだよ……これ」
と雨にさらされいるのか中は思いっきり水浸しであった。
ランチェルは警戒しながら
「水には近づくな、どこから襲われるか分からない」
と言って出来るだけ水のない場所を歩いて探索した。
すると一人のお爺さんが現れた。
「アアガヤアアアアアアア!! 祟りだあああ!! 地獄が今始まるううううう!!」
と何故か発狂していた。
啓示やその仲間を指さして怯えているようであった。
啓示は近寄り
「落ち着いてください、我々は貴方に何かしようと思っていません」
と安心させようと言葉を掛ける。
しかし、お爺さんは涙を流しながら
「もう苦しいのは嫌だあああ! どうして沈めるんだああああああ!! 壊れているうううう!」
と何かに怯えていた。
そして、啓示の胸倉を
グイっと引っ張り
「孫を返せええええ! 息子を返せええええ! 嫁を返せえええ!」
と揺さぶりながら泣きじゃくる。
ランチェルはお爺さんを押さえて
「何をする! 止めるんだ! お前の家族を殺したのは啓示じゃない! 落ち着くんだ!」
と言って宥めるが全く聞く耳を持たず
「けれええええええええ!! けええれええええええ!!」
と怒鳴りながら啓示達を追い返そうとした。
レジリアは啓示の肩を叩き
「今日は帰ろう、さすがにこんな状態では……」
と言って日を改めようとした。
啓示は頷いて
「分かった、今日は帰ろう……」
その言葉にランチェルも頷いて立ち上がる。
お爺さんは涙を流しながら
「ううわあああああ」
と蹲る。
そんな時だった。
『お前の家族……返して欲しいか? ならそこの中華服野郎を押さえ込め、ならば返す』
その言葉を聞いてお爺さんは追い詰められた目でランチェルを見た。
そして、
「イギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と叫んでランチェルを掴んだ。
ランチェルはカウンターでお爺さんを殴った。
「ぐばあああああああああああああああああああ!!」
と大量の血が地面に吐き出して吹っ飛んだ。
啓示は
「おい! 大丈夫か!」
とお爺さんに近づくがランチェルは肩を掴んで
「行くな、何をされるか分からない」
と言って啓示を止める。
ブクブク
と地面を濡らしている力空気の様な泡が立つ。
しかし、誰も気付くことは無かった。
啓示はそんなことも知らず
「だがさすがに今の攻撃でお爺さんが」
「だけどあいつが暗殺者って可能性も少なくわない、少しは警戒しろ」
と啓示を説得していると
ガシ!
と足を掴むような感触が現れる。
ランチェルは足元を見るとそこには口の端を糸で縫い付けているニタアッと嗤っている女性が不気味に引っ張った。
「うぐ!!」
とそのままバランスを崩してランチェルは足を滑らした。
その瞬間をハイネウスは逃さなかった。
「このまま落とす!」
そう言って足を掴みそのままランチェルを血の海の中に引っ張り込んだ。
「ウグググググブブブブブブブブブ!」
と口から大量の泡が出て行く。
空気もあまり多くは肺に入れていなかった。
あまりに突然の不意討ちに息を十分に吸えていなかった。
そして、そのままランチェルは引きずり込まれる。
と思ったが、突然ハイネウスはランチェルの首を絞めた。
「うぐううぐう!!」
「じでえええええええ!!ろべいどのがだぎいいいいいいい!!」
と息を大量に吐きながらランチェルを暗殺しようと目を見開いていた。
不気味に歯を食いしばるハイネウス
抵抗しようと藻掻くランチェル
ランチェルは
『このままだと死ぬ……何とかしてこいつを!!』
と考えていると縫われている口の部分を見た。
怪我が塞がっている。
ただそれだけなのにそこが異様に気になった。
格闘者としての勘がそこを注目させた。
ランチェルは格闘家として相手の弱点や受けたくないことなどを見抜くことを得意としていた。
そして、ランチェルはその縫っている部分を
『王武術:手刀』
を放った。
ブチブチブチ!!
ハイネウスは寸前で避けて口を裂かれずに済んだ。
しかし
縫い合わせている糸が切れた。
本来ならそんなことは気にすることは無いだろう。
だがハイネウスにとって糸を切られることは
「イギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
と悲鳴を上げてすぐさま水中下奥へと潜った。
ランチェルはその瞬間を見計らって水中から出ようと上へと移動した。
ハイネウスは
「あぎゃばあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! ぬわなぎゃああああああああああああああああああああ! ぬわなぎゃああああああああああああああああああ!!! もういやだああああああああああああああああああああああああああああ!!」
と水中下に置いていた裁縫セットを使って口を素早く縫い合わせていった。