依頼39『薄情な家族』
「キャハハハハハ!! 馬鹿だねええ! 一瞬の事で分からなかったのかなあ? 多分死んだことに一瞬気付けなかったんだろうねええ! 心臓を抉ってもすぐには死なないみたいだったねええ! その後死んだのかなアあ?」
と笑っているノリアに怒りが込み上げる。
啓示はギリギリと歯を噛み締めた。
「そん……なあ……メサリ―……ごめん、助……られなくて」
ベルマズサの刺された部分から
『暴食』
という文字が浮かび上がり体全体に広がっていった。
「ぐうぐう!! あがあああああ!!」
と痛みに悲鳴を上げながら涙を流す。
ベルマズサは死んだ妹を見て
「いやだ……死なないでくれ……メサリ―」
「無駄あああ!! もう死にましたああああ! あああ! 君の父親も君も薄情だねえええ! 妹を死なせておいて同じところに行けないんだからああああ! 知ってるでしょおお? 魔剣に刺された者は魂ごと滅ぶって!! 君の父親? ナリア姉の魔剣に殺されたんでしょおお? あああ! とっても薄情! 妹を母親から離しただけじゃ飽き足らず自分達すら一緒に居られないんなんてええええ! イヒャハハハハハハハハ!!」
と腹を抱えて嗤っていた。
ランチェルは
「誰の……誰のせいだと思ってるんだ! 全部お前のせいじゃないか! 全部お前等のせいじゃないか! 王と契約を切る時に人を殺しただけじゃ飽き足らずどうしてここまでするんだ! どうして罪なき人間を殺して平気でいられる!」
「ああ? 何言ってんの? まあいいや、どうせ私の言葉何て信じやしないんだろうし……それにいい! 罪なき人間なんてこの世の中にいないよおお! どうせどこかで人に恨まれる! ロメイトの芸術作品の中にあった妊婦の顔面を見て可哀そうだと思っただろうけどおおお!! 残念ながらあの女は婚約者がいる男を寝取ったあああ! それって本当に罪じゃないのかなあああ! 本当の愛じゃないからってそれは相手側からしたら本当の愛だったって思ってもみなかったのかなあ? 私とナリア姉との持論だけど人って知らないところで沢山の罪を作ってるんだよおお! だから罪ない人間なんていないんだよおおお! それにいい! そこの騎士さんも! オークを全滅させたって本当かなああ? お前等だけで本当にオークを殺したのかなアあ? 君達程度の強さじゃあ無理だよねええ! 嘘? 着いたんでしょ?」
とニタっと嗤ったノリアを見てベルマズサは冷汗を掻いた。
ノリアはその様子を見て
「やっぱり嘘だあああ! つまり罪だよねええ! それはとても重い罪だよねええ! 罪のない人は裁いてない! つまり私とナリア姉は罪人ではない! 皆自己都合で人を殺す! ならば私もナリア姉も普通! 一般! 只の職業暗殺者! それだけじゃあああん!」
と言ってベルマズサを侮辱の限りを尽くす。
そして、
「ではさようなら? もう終わりだね? バイバイ、家族を見放したとてもとても薄情で冷たくて妹を守ることも出来なかった残念なお兄ちゃん、私のナリア姉とお母さんとお父さんを見習う様に! あ! ごめえええん! もう魂も滅びるから転生もないんだっけええええ!」
「糞おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……あがああ」
ベルマズサはそのまま体が崩れ去った。
その叫び声は
とても悲しい
とても寂しい
とても苦しい
とても辛い
何者も守ることが出来ず、
何も成しえず終えていく
そんな悲鳴であった。
レジリアは悔し涙を流していた。
リストアは震えて絶望していた。
シャーレ―は自分の無能さを苦悩した。
ランチェルは拳を壁に叩きつけた。
啓示は黙ったままであった。
聖剣は
『啓示! 今は絶望している暇はありません! 敵はまだ生きています! 啓示! 啓示いいい!』
叫んで啓示に呼び掛ける。
だが啓示は動かなかった。
ノリアは不気味に嗤いながら
「イヒヒヒハハハハハハ! もう打ち止めかなアあ? まあいいやああ! 何を考えているのか知らないけど私は私で動かせて貰うねええ!」
『べええええええ!』
『ばあああああああああ!』
『ぶbらああああああああ!!』
体中から沢山の口を出現させて舌を揺らして勇者達をノリアは煽った。
ノリアは
「ほらほらああ! お前等が家族愛もどきに意識をやっている間に武器は全部回収! 周りを見てごらん! 落ちている物ないでしょおおおお!」
その言葉を聞いて啓示以外の皆が周りを見ると先程弾いた武器は一切消えていた。
ランチェルは
「まさか……あの時すでにその舌で」
「そう! 君は頭良いのにどうしてそんなことに気付かないのかなアあ? あああ! 実はバカだからかあああ! アハハハハハハ!」
黙ったままの啓示にレジリアは
「しっかりしろ! 啓示! お前がしっかりしないとダメだろ!」
と声を掛ける。
リストアも
「啓示いいい! 私達も頑張るからああああ! 黙っていないで何とか言ってよおおお!
」
「啓示さん! 苦しいのは分かります! でもお願い!」
シャーレ―も啓示に呼び掛ける。
ノリアは嗤いながら
「アハハは! 腑抜けてるううう! アハハハハハ! 弱っちいいのおおお!」
そして、ノリアは啓示に襲い掛かった。
「魔剣はもうないがお前を殺す方法何ていくらでもあるんだよおおお! この糞!」
そして、そのまま武器を使って啓示の首を斬ろうと飛び込んだ瞬間
「!!」
何かを察知して地面に足を付けた。
「もう……いい」
シュン!
と風を切る音がしてノリアは飛び退いた。
「危な!」
そう言って腹が少し切れていた。
ノリアは
「ふうう、腑抜けてはなさそうだね」
すると啓示は睨むように
「あんたから話を聞こうとはもう思わない……お前には即死スキルを使わない」
「はあ? 何言ってんの?」
グシャん!
「え?」
その時、ノリアの腹が裂けた。