依頼34『ナリアの走馬灯⑤』
私はその紙の内容を読みすぐに契約をした。
欲望を叶える。
魂を代償に
迷わない。
死ねば人間は全て地獄に堕ちると持論を持っていた。
天国何てところには人間には絶対にいけない。
私自身もそこに行きたいとは思わない。
そこには何もしない傲慢な奴しかいない。
私の幸せと普通を奪った奴しかいない。
当然の様に最悪をもたらして、都合が悪くなれば悪魔へ責任を押し付ける。
私は掃除論を持っていた。
それならば契約に忠実と言われている悪魔と魂の契約をした方がマシだ。
そう考えた私はそんな傲慢な奴に頼りたくないという思いと追い詰められているという事でサインした。
すると
『ああああ、アハハ、そうだねエ……君は傲慢と言われるだろうねえ……あいつ等からすれば君はとっても悪い子だ』
「フーン、そうなんだ……早く能力を頂戴よ……でないと」
『慌てるんじゃないよ……そんなに焦る必要もないさ……契約時は誰にも私達との会話やコミュニケーションは邪魔できないようになっているからね、神聖何だよ、悪魔にとってもこの儀式はね……そんなとても神聖な儀式で邪魔が入るなんてとんでもない』
その言葉を聞いて私は
「悪魔が神聖って……」
と呆れると悪魔の方がさらに呆れて
『あのねえ? 神聖=神の言葉みたいなことを言わないでくれ……我々だって一つの神だ、地の番人と言えばいいか? いやそれでも我々の様な力のある者をどうして悪魔だから悪いというのか……困ったものだ……神だって生贄を用意しろだとか人間の土地を自分の聖地にしてるじゃないか? それなのに我々がこの地に上ると魔王の誕生だとか言われて否定される……それって理不尽じゃないか? 悪魔の聖地は無いのに神の聖地はある、しかも神は悪魔と違って信仰がある、だから我々も神同様に契約をして信仰して貰うんだよ? そう! 私だって一人の神だ! なので神聖という言葉はとても相応しいのだよ』
と説明を加える。
そして、悪魔は
『申し遅れました、私、デマフォス・レイザ・ハイドと申します、貴方様に相応しい能力を授けましょうか?』
「それも神が人間に与える奇跡みたいな者ってこと?」
『そうですよ! 時々現れるでしょ? 神の奇跡を持って生まれた人間が、しかもそいつは当然の様に神を父として崇めて信仰を始める、ならば私のこの契約だって一つの信仰だよ、奇跡だよ、君の欲望が私を引き付けたのだから、神だって人間の希望を叶えるという名目で奇跡を起こしているが結局はただの欲望だ、祈りと言って雨を降らせてください、力をください、この子を助けてください、結局のところ全部欲望だ、その欲望を叶えることと悪魔の違いはない、地か天にいるかだ』
私は嗤いながら
「アハハハハ! そうだね! ならば私のこれも悪い事じゃない! 普通だ! とてもとても普通だ! 否! 寧ろ生きる為の希望だ! 契約をする事に何も躊躇いわない! で! 魂の契約とは奇跡を貰った人間が神の身元に逝くように悪魔の身元に私が逝くだけだね!」
『そうだとも! 死んだあと神の元で魂を使われるか、悪魔の元で使われるかの違いだ! 勘違いも甚だしい人間でもこういう理解のある人間は嫌いじゃないよ! 我が娘よ!』
そして、デマフォスはニタニタと嗤いながら
『では、そこにいる君の人生を奪おうとする不当な輩を殺しますか? 最初は手伝ってやろう、この能力はパートナーがいる方がとても好都合な能力だからね! それにそのパートナーもすぐに現れるよ』
「どういう?」
そして、デマフォスは止まった男の皮膚を千切り
『ほら、食べると良い』
そう言って私の口の中に皮膚の切れ端を入れた。
そして
「うふうう!!」
一気に何かが体に電気の様な刺激が走る。
そして、分かる、奴はもう私を殺せない。
『ではもう君に任せても良いね? 頑張りたまえよ!』
そう言ってデマフォスは地面へと消えた。
そして、時が動き始める。
男はハアハアと息を荒げながら私を探す。
「どこだああああ! どこだああああああ!」
と血を流しながら武器を構えていた。
私はさっそく貰った能力で
「あの人こわ」
と言っている人に
グシャアアアアア!
「え?」
「何……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
隣にいた人に血飛沫が掛かる。
そして、衛兵が来て
「何をしているうう!」
「違う違う! 俺は! 俺はあああああああああああああああああああ!!」
そんな動揺をしている間に
「ちが……ぐばお!」
自分に武器で喉を切り裂いた。
そして、男は絶命した。
私はすぐにノリアを探し始める。
そして、それらしき人物を見て私は声を掛けると
血まみれのノリアが
「あお姉ちゃん、お母さんとお父さんはもうずっと一緒だよ!」
とニタニタと嗤っていた。
何かをした、それだけは分かった。