依頼33『ナリアの走馬灯④』
その後、私はノリアと共に奴隷共を売る為に町へと向かった。
すると一人の奴隷が
「あのお……トイレを」
「そこですれば? 私達は安くなろうとお前等に自由は与えん、あのバカ奴隷商人と一緒にするな」
それだけ言って後は放置した。
もちろん金は値切らせるつもりはない。
それはとても簡単な話だ。
それを考えていると同時に
ジョロジョロジョロ
と何かが漏れる音がした。
さすが負け組の奴隷共だ
羞恥心というものすら消え去ったようだ。
そして、私は漏らした恥知らず奴隷共をノリアと共に街へと運び、奴隷商人の衣服のお陰で怪しまれずに貴族宅へと向かった。
そして、メモに書かれている住所に向かうと貴族の主人は
「フン、臭いな、何だこの不良品は……金は払わんぞ!」
とさも当然に言って来た。
なので私は事前に配置したノリアに
「フーンそうなんだ……ならばこの子の命はいらないんだねエ」
そう言ってノリアに人質の子供を持ってこさせた。
ノリアは意外と俊敏に動けるみたいであり、バレずに子供の口を塞いで、誰にもバレることなく連れて来れたようだ。
先程の奴隷商人の武器を盗んだ時も明らかに悟られないように盗んでいた。
そこに妹の、とても可愛いノリアの才能が隠れていると私は踏んだ。
そして、その手が上手く行き貴族の主人は真っ青になり
「! 止めてくれ!」
とガタガタ震えていた。
子供はノリアの手の中で
「うふふああああああああ!!」
「正規の値段で返すぞ? それにこのことはもう誰にも言えないはずだ……善良な市民や衛兵達に、奴隷を値切ろうとしたら子供が人質に取られた何て……さあどうする?」
その言葉を言えばもう簡単だ。
金は払われた。
そして、少し色が付いた。
私とノリアはその手段を使い次々と奴隷共を売り払った。
最後に二人の少女が売れた。
何か野心的な目をしていたが特には気にしなかった。
確か、私を感銘的な目でずっと見ていた事は覚えている。
そして、私とノリアは金を持って街から出ようとした。
しかし、一人の正義感と言わんばかりの目をした男がつけてきている。
私は気になり、馬車を
パシイイイイイイイン!
「ヒヒイイイイイイイイイイン!」
と一気にスピードを上げた。
街の事を知っているのか何故か振り切れなかった。
そして、私は目の前にある者を使う事にした。
奴隷商人から奪った小刀をノリアに
「奴に投げろ、お前が一番才能がある」
とだけ言った瞬間、ノリアは当然の様にある者へと投げつけた。
ヒュン!
と風を切るを音が鳴りそのまま
シュバ!
「きゃあ!」
「あああああああ!!」
と一人の女性の腕が斬れて抱えていた赤ん坊が落ちた。
赤ん坊は地面で
「ああああああああ!! ああああああああああ!!」
と泣きじゃくる。
そして、私はその赤ん坊目掛けて馬を
ピシイイイイイイイン!
「ヒイヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
スピードを上げた。
「え! うそ! そんな! 止めて! 止めて止めて止めてええええええええええええええええええ!!」
悲鳴を上げて赤ん坊を素早く拾おうとするがもう遅い
ズシャアアアアア!!
馬に腕をへし折られてそのまま馬車のタイヤに轢かれて
「あああ……」
息絶えた。
女性は
「ああ……ああああああ……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と悲鳴を上げて泣き叫んだ。
私も必死だ、
人の命、小さい生命、そんなものは今のこの状況下で全く関係ない。
私とノリアにとって今ある者全てを利用する。
それ以外の手段以外の感情は邪魔であった。
その為、後ろでどれだけ泣いていても何も感じなかった。
寧ろ至極当然だと思った。
私はこの方法を取ったことに少し自分を感心した。
そして、振り返らずに逃げていると追っていた男の声なのか
「そんな……俺の……俺の娘をおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
と悲鳴のような声を上げていた。
私は
(よし! ラッキーだ! このまま逃げるぞ!)
とだけ考えていった。
私は私の判断で人の命を左右したことになるが全然罪悪感は無かった。
それどころか協力したノリアに
「良くやった! 私の意思を読んで偉いぞ!」
と褒めたらノリアは
「えへへへへ! そうでしょ! ナリア姉は凄いもんね!」
と褒めてくれた。
当然私は凄いんだが改めて言われると自分でもほれぼれしていった。
そして、大金をゲットした私とノリアは学校には行けなかったもののそれなりに生活をしていた。
家を買い、仕事を見つけた。
金が足りないと他の人間の家から盗った。
泥棒は悪い事だというが盗まれた奴がダメなのだと私は感じた。
当然だ。
私は許される。
当然に
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そんな生活を続けているとノリアが帰ってこない。
何故だと思い探していると一人の男が現れた。
髭もじゃでやさぐれていた。
そして、窶れてもいた。
その男は
「お前等のせいで、……お前等のせいで俺の宝物があああ」
と唸る様に声を上げる。
私の役になった赤ん坊の父親だとすぐに分かった。
どうして恨まれる?
私は最善の手段を取ったまでだ。
そもそもお前が追いかけるから悪いんだ。
私は悪くない。
だが理不尽の男は私に容赦なく襲い掛かる。
すぐさま逃げた。
当然だ。
言われもない無実なのにどうして
そんな時、一つの紙が現れた。