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依頼32『ナリアの走馬灯③』

夜逃げをして1カ月経過した。

未だに父は仕事を見つけられていなかった。

元々父は魔術を専門とした家系であり、その部門の仕事をしようとしても魔王封印管理の仕事をしていたという情報が漏れており、雇っても貰えなかった。

なので仕方なく肉体労働の仕事に就こうとしたが結局体が持たずすぐに辞めてしまった。

その為、母が日雇いの仕事を詰め込み働くが限界があった。

ただ、限界が来たら何とかして私達が物乞いをすれば稼げるので大丈夫だったのだろう。

しかし、父も母も日に日にやさぐれていった。

母は口癖のように


「全く、こんだけの稼ぎ……こんなんじゃあ生活できないでしょう!」


父は父で


「だったらお前が働けばいいだろうが! 俺より仕事を持ってんだろ! 俺が働かなくても良いんじゃねえのか!」


と喧嘩が絶えなくなった。

私とノリアは我慢しながら眠りそして、再び物乞いをして足りない分のお金を稼いでいた。

しかし、母も父も私達の事を今度は邪魔だと思うようになった。

心に余裕がなくなり私達さえいなければ好きなことが出来ると考えるようになったのであった。

最初はなんとしても私とノリアをどんなことがあっても育てる。

そんな風に生き込んでいたがドンドンとそんな風に私達を邪見するようになった。

父と母とはもう何日も話をしていなかった。


だが私もノリアも気にしなかった。

私はそもそもそんな事が嫌だとか思わなかった。

ノリアは家族がずっと一緒であれば何も問題はないと考えているようだ。


だがそんな日々が続いていったせいで父と母は私とノリアを

奴隷商人に売った。

父と母は半分半分の分け前を取って別れていった。

ノリアはずっと泣いて


「嫌だあああ! ママああああ!! パパああああ! どうして!! 私とお姉ちゃんとパパとママはずっと一緒って言ってたじゃないいい!! 嘘だったの!! そんなのだめだよおおお!」

「うるさいわね! あんた達が居なければ私ももっと楽に生きられるのよ! あんた達の為なんかで私の人生を壊さないで!」

「お前等なんてもう知るか! いつもいつも俺等の金ばかり喰いやがって! ふざけるな! 自分で稼いで生きるんだな!」


二人はもう、私とノリアに対して家族とも思っていなかった。

それでもノリアは泣き叫びながら二人をパパママと叫び続けていた。

そして、奴隷商人が街を出るまでその叫び声はずっと響いていた。

私はノリアの悲しい顔を見て心が痛くなった。


どうして皆私の思い通りにならないんだろう。

私の願う通りになってくれれば私もノリアもとても素晴らしい人生を遅れていたに違いない!

私の思い描く素晴らしい日々を送れるようにどうして世界は動いてくれないのか。

意味が分からない。

私とノリアがこんなにも望んでいることがどうして叶わないのか。

どうして世界は私達を苦しめるのか。

本当に意味が分からない。

だが、ならば分からせてやる。

知らしめてやる。

私達は楽しく幸せに暮らすべき存在なんだと。

生きるべき存在なんだと。

楽しく生きるべき特別な存在なんだと。

理解させてやる。


そして、私はノリアの方を見ると泣いていたノリアも私の考えていることを理解してくれたような目で見てくれた。

きっとノリアはこれからもいつまでも私の事を理解して、私の思い通りに動いてくれるだろう。

私が信じられるのは妹だけだ。

妹は私とは違う考えもあるがそれでも私の妹だもの。

私の事を理解して、そして私も妹を理解している。

だからこそ妹は守るし自分も守る。


私は奴隷商人に言った。


「あのお」

「何だ」


と鬱陶しそうに奴隷商人は振り返ると私は


「妹がトイレに行きたいと言っているのです、少しトイレをさせてあげてください」


と媚びる様にお願いをする。

すると奴隷商人は見下したように


「フン、そこで出せばいいだろ」


と無視した。

私は奴隷商人に


「良いんですか? そんな事をすれば他の商品の価値も下がるのでは? 値切られますよ? そうすれば貴方は稼げるお金をドブに捨てる様な事と同じですよ? それでもここでおしっこしても良いならしますが?」


と話し掛けると奴隷商人は仕方なさそうに


「分かったよ! 良いだろう、出してやる」


そう言って鍵を持って荷馬車の檻の鍵を開けた。

奴隷商人はドアを開けて


「ほら、さっさと終わらせろ」


と面倒くさそうにしながら言うと私は


「では」


と言った瞬間奴隷商人に飛び込んだ。

奴隷商人はバランスを崩して転んだ。

そのまま、ズッコケた奴隷商人の後ろに回って首を絞めて


「今だ! ノリア!」


そういうとノリアは首の腕を解こうとしている奴隷商人の短剣を鞘から抜いて


「死ね」


そう言って奴隷商人の顔面に突き刺した。

ノリアは嬉しそうに


「アハハハハ! やったよナリア姉! こいつ死んだ死んだ死んだあああ!」

「ああ、そうだな……死んだな」


私は少し緊張が解けたがすぐに冷静になった。

すると他の奴隷は


「あんたスゲエ! あんたのお陰で皆逃げれる! さあ! 皆ここから出るんだ!」

「おおおおおおおおおおおお!!」


と喜んでいる男の子供二人。

私は呆れながら持っていたナイフを檻にいる奴隷に突き立てて


「ダメだ、戻れ」


と命令した。

当然聞いて然るべきだと分かるべきだ。

だが最初に叫んだ男は


「ああ! なんでだよ! 助けてくれるんじゃねえのかよ!」


と文句を言って来たが私は


「誰がお前等を助けるって言った……お前等は自分で勝利を得ようとしないだけだ、それが決定的に私達に敗北したんだ、そんなお前達を助けて私に何の得がある?」


と疑問をそのまま相手に返すと


「はあ! 普通は人間として助けるべきだろ」

「人間としてだと! 私達としてお前等を助けるに値しないんだ! この負け犬共が!」


とキレて罵った。

すると反抗的な奴が


「ふざけるなよ! 負け犬だと! 俺はな! お前みたいな人を見下す人間が嫌いなんだ!」


と言って掴み掛ろうとするので、


「分かった、じゃあもうアンタはいらないから見せしめね」


と言ってノリアは持っていた短剣を使って


ブジャ!


と首の咽喉ぼとけ部分を斬り付けた。


「あがあ!!」


血を噴出させながら少年は倒れ込む。

血が付かないように奴隷の檻から離して顔面を蹴り上げた。

少年は痙攣しながら地面に転がる。

他の奴隷たちは震えながら檻に縮こまる。

私は言った。


「お前等はこれから私達に奴隷として売られる、お前等は私とノリアが人生をやり直す為の資金として役に立つんだ」

「な! なんでえええ」

「だってお前等負け組だもん、だからあああ! あんた達は私とノリア姉の幸せの糧になるんだよ! だって君達負け組だもん! 私達みたいに自分達で何とかしようとも思わずただただ揺られてただけの奴隷でしょう? だったらいいじゃん! だから大人しくしてるんだよ?」


そう言ってノリアは短剣で死体を


グシャ! グシャ!!


と痛めつけた。

他の奴隷達は涙目で見つめていた。

だが何故か一人だけ少女が私に感銘を受けたように見ていた。


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