依頼26『芸術という名の絶望』
啓示達はロメイトの鍛冶屋へと向かった。
そして、
「ここに……いるんだろうか」
そんな不安が心を駆け巡る。
ランチェルは
「確かに……奴がここに隠しているとは思えない、死臭がしない」
レジリアは不安そうに
「だが確かめるしかないだろう」
そして、中へ入っていった。
するといつもの受付のアメナガスがいた。
「あら……来たんですか? ロメイトさんは死んだみたいですし王が剣全てを処分したんで質の悪い物しかありませよ?」
と本を読みながら言った。
するとライベルザルトは
「ここにロメイトが死体を遺棄している可能性がある! 調べさせてもらう!」
アメナガスは不思議そうにしながら
「? さああるんですか? なら何で王は見つけれなかったのですか? あるならすでに見つけてるのでは?」
と確認すると啓示は
「王はロメイトの剣を処分する事を考えていたそうです、殺人鬼の作った剣を売るのは国の名声に関わるとのことで処分しないといけないらしい」
と伝えるとアメナガスは
「つまり本格的な事は今からと言う事ですか? なら探せばいいんじゃないですか?」
と言って再び本を読み始める。
ベルマズサは睨みながら
「さっきから勇者様にその態度! 失礼じゃないですか!」
と怒るがアメナガスは
「勇者だからって優遇するのは良くないのでは? 誰に対してでも同じような接客をするようにロメイトさんからは言われてましたので」
アメナガスは習ったことをそのまま伝えた。
すると少年が出てきて
「これはこれは! 勇者様! ようこそいらっしゃいました!」
お辞儀をしていた。
アメナガスは目を向けて
「ああ、いたんですね……私そろそろ帰りますね、定時何で」
と言ってアメナガスは買える準備をしていた。
すると少年は
「おい! 僕がこの店を仕切る事になったんだ! 君にはまだ働いてもらうぞ! そんなにやる気がないなら給料を払わないぞ!」
と脅す様にアメナガスに伝えると
「分かりました、じゃあ辞めます、今までお世話になりました、ロメイトさんが居たからこの店で仕事をしていただけなんで、あの人に事務員として資金管理してただけなんで、貴方だと……フン、もう無理でしょうね、貴方にこの店は支えられないです」
そう言って立ち去った。
ランチェルは
「ふっふざけるな! こいつは絶対にやってみせる! あの悍ましいロメイトより絶対に凄い剣を作れる男になれる!」
その言葉にアメナガスは
「じゃあお疲れ様です」
と言ってそのまま出て行った。
そんな彼女を見てランチェルは
「糞! あの女も馬鹿にしているのか!」
と憤りを感じていると少年は
「良いんです、なら僕が全部やりますよ! アイツなんかに! あの外道なんかに絶対に負けません! 努力すれば! きっとあいつ等を超えることだって出来る! 僕は負けません!」
そう言って笑って見せた。
そして、ランチェルは
「……そうか、分かった! 頑張れよ!」
涙ぐみながらもそう答えた。
そして、話を進めた、ロメイトがもしかしたらこの鍛冶屋の中に人の顔を隠している場所を探すことになった。
「そういえば、あの外道、この地下だけは開けるな、開ければお前を殺すと言っていたな」
その言葉を聞いて啓示は
「そこを案内してくれ! すぐに!」
それを聞いて少年はその場所を案内した。
鍵がかかっていたが、錠前で会った。
なので
「ふん!」
と啓示はすぐに聖剣で錠前を潰した。
そして、ドアが
ギギギ
と勝手に開いた。
そして、
「う……そ……ううううえええええええええええ」
リストアは吐き出した。
「大丈夫か! リストア! 無理するな!」
「酷い……ここまで……糞!」
とレジリアはその部屋を見て怒りが沸き上がった。
啓示は涙を流しながら
「どうして……どうしてこんなことが出来る……どうかしている……」
「反吐が出る」
ランチェルは俯き悔しそうにしながら握り拳を作る。
ダべダルドは
「ここまで酷いとは……ここまで残酷な事を……何が芸術だ……」
部屋の中は絶望の表情をした顔が大量にあった。
ハンティングトロフィーとロメイトは言っていた。
まさにその通りに人間の絶望の表情が飾られていた。
皆、死んだ時の表情ではない、
涙を流して目を見開いている者
絶叫を上げたまま怖い物を見たくないと目を瞑る者
恐怖に震えて俯く者
信じられないものを見せられて嫌そうにする者
そんな沢山の絶望があった。
どうしようもない絶望
変えようのない絶望
希望を潰されていた部屋
希望を産ませない部屋
そんな部屋であった。
啓示は嗚咽をしながらも
「探そう……レイミーを」
そう言ってレイミーを探し始める。
ランチェルも
「俺も探す」
「俺も」
ラベルも探し始めた。
そして、絶望を見せられ続ける。
拒否することは出来る。
見ないようにする事は出来る。
しかし、仲間を探す為にそこの絶望から目を背ける訳にはいかなかった。
そして、
「あった……見つけたよ」
啓示は涙を流しながらそこにレイミーの絶望の表情を見つけた。
声を上げて悲鳴を上げて助けを求めたくてもそこにはない、圧倒的な絶望であった。
そして、下にこう書かれていた。
『二番目に綺麗な絶望!』
と書かれていた。
そして、一位と書かれていた絶望は母親だと分かった。
ロメイトの言葉だけで理解していたのではない、
言われなくても分かってしまう絶望が流れ込む。
その部屋に入っただけで全ての絶望が入り込み自分を蝕むようだった。
そして、三人は出来るだけそんな絶望に浸りたくなくてすぐにレイミーを回収しただけであった。
そして、
「ちゃんと助けよう、弔って上げよう」
そう言って皆疲弊した心を少し休めてから全ての絶望を回収した。
時間は掛った。
だが無視は出来なかった。
その恐怖は放置して良い物ではない。
全ての被害者の尊厳を守りたかったからだ。
少年も手伝った。
反吐を何とか我慢しながら回収し続けていった。
そして、被害者全てを教会で清め弔った。
するとリストアは言った。
「足りないよ……」
「え」
「足りないって?」
ランチェルと啓示が聞くと
「顔のない被害者の数が足りないよ……まだまだいるんだよ……助けられなかった人が」
そう言って泣いていた。
そして、自分の無力さを皆感じ悔しそうにする。
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「あーあ、ロメイト可哀そう」
「まあ良いじゃないか、どうせ他にもあるんだぞ? 奴のコレクション芸術はまだまだたくさんあるんだから」
そう言って笑っていた。
そして、ノリアは
「いつのタイミングで殺す?」
「そうだな? どのタイミングだろうか? 人が沢山いる方が良い、なあ! ノリア!」
二人は顔を見合わせて
「にいい!」
「んふうう!!」
とニヤリと嗤った。
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べクレール王は
「この顔は……王国を裏切って魔王のスパイをしていた者か!」
「知ってるんですか!」
啓示が聞き返すと
「ああ、確か子供を人質に取られていたそうだ、だが結局情報を届けられず我々も見つけられずで子供は殺されてしまった、まさか殺人鬼に殺されていたとは……何という悲劇だ……」
と悲しそうにする。
啓示は
「許せない、こんなことをする暗殺者を……許せるはずがない……絶対に負けたりしたくない、そんな奴等に魔王退治を邪魔されてたまるか……絶対に全てを退いて見せる!」
と決意をしていた。