依頼21『ロメイトの走馬灯③』
私は契約書にサインをすると書類から一人の男が出てきた。
片眼鏡を掛けてスーツを着ているオールバックの男性であった。
「私の名前はデマフォス・レイザ・ハイドという悪魔です、これから貴方に能力と望む事を叶えていかせて貰います」
そういって私の方を見つめる。
私はじっと見ながら
「ねえ? 魂の契約って書いてるけど……それってどれぐらいの事をしてくれるの?」
「死ぬまでですよ」
「死ぬまで?」
私はその言葉に少しワクワクしながら聞いた。
デマフォス・レイザ・ハイドと名乗った悪魔は
「当然です、貴方の魂を頂くんですからそれなりの事をさせて貰いますよ」
とニヤッと嗤いながら手を差し伸べる。
「私ばっかりに構っていて良いの? 他にも契約した人に尽くすとかはないの?」
「大丈夫ですよ、悪魔は同時に何人もの人間の欲望を叶えられるんですから、神だってたくさんの人間の様子を見たり祝福をしたりと色々しているでしょう? 神に出来ることが悪魔に出来ないとでも!」
その言葉に私は感銘を受けた。
そうか、悪魔だって神と同じく人智を超えた存在だ。
そんな存在に出来ない事は無いだろう!
私の欲望も叶えることが出来る!
私はこの悪魔の言っていることを信用した。
言葉だけで信用出来ると私の勘が今契約したことを正解だと感じ取った。
私は
「よーし! やったぞ!! 能力も貰えて絶望という芸術を作れるぞ! 欲しい欲しい欲しい!! ハハハハハハ!!」
私は嗤いながら悪魔に力を貰い、芸術を永遠にする為の白い石を剣の材料を探している時に見付けるなどの私にとって都合の良い結果をもたらしてくれた。
欲望を叶える為の運命が私に向いている。
そんな私の人生はたくさんの幸せに満ち溢れた。
そして、私は能力悪魔の時間の力で殺人を行っていった。
この能力は便利だ、自分以外の時間を止めれるし、指定した相手だけは時間を動かすことが出来る!
その上この能力を使っている間、私は動けるが自分の成長と寿命を減ることはない。
つまりは動けるけど悪魔の力でちゃんと停止時間外の寿命で生きることが出来るのだ。
その間は誰も邪魔はせず絶望相手と私だけの時間が始まる
殺人をしない時は鍛冶師の仕事をしてお金を稼いで良いと思った相手を殺して回る日々を過ごした。
「止めてえええええええ!! お願い! 私はただ子供を助けたかっただけなの! 魔王に王国の情報を売れば子供は返してやるって言ってくれたから!! だから!! お願い! 助けて!」
「アハハハハハハ!! ダメえええ!! やりまあああああああああす!!」
「いやあああああああああああああああああああああ!!」
女は悲鳴を上げて泣きじゃくりながら絶望の表情を奪われた。
「アハハハハハ!! 何かを救うために頑張っていたのに別の事でその命を散らせるなんてええ!! そして最後まで勘違いして死んじゃうなんてええええ!! 惨めえええ!! アハハハハハ!! ああ、心半ばでやり遂げる事が出来なかった人の絶望の表情は本当にイイねええ……最高」
涎を垂らしながら顔を持って嗤っていた。
私は今度欲しかったのが手に入ってご機嫌だった。
色々な絶望の表情を見つけてハンティングトロフィーとして飾っていた。
絶望にも色々あった。
私腹を肥やしていた人間がその幸せを奪われる絶望
子どもを奪われた、大切な人を奪われる絶望
忠誠を誓った人間を目の前で殺される絶望
等々を私は芸術に加えていった。
拷問の絶望はとても最高だ。
私自身が鍛冶で作った剣や武器などを使って相手を苦しめて精神が壊れた時の虚脱した絶望の表情が私に鍛冶という仕事へのモチベーションとなった。
そして、私が作った武器を持って私に立ち向かう奴を屈服させるのは最高だ。
私が予めに仕組んだ作りで私がそこへ攻撃をすると武器は壊れる。
信じていた武器が壊れた時の絶望の表情はとても最高だ!
だが数年後ある悩みが出来た。
私はとてもとても残念なことで悩む羽目になった。
私は自分の家に地下を作った。
私の財産を持ってすれば可能だった為にそれで何とかなっていたしバレもしなかった。
しかし、その地下にある作品が多くなりもう入らない。
私はとてもとても悔しくなった。
また地下を作ればここがバレる可能性がある。
例え隠しても血の匂いでバレるだろう。
もうちょっと考えて地下をたくさん作るべきだったか。
しかし、たくさん作ってもいつかはこうなるだろう。
私はどうするか悩んだが思いつかず苦しんでいると
「貴方がロメイトかな?」
と一人の女性の声がした。
私は悪魔の時間を使って時を止めながら考えていたのにその中に侵入した人間がいた事に驚いた。
自分が指定してもいない相手が普通に動いている。
悪魔の時間を意図せずに解いてしまったのかと焦り私は外を見るが皆、時間停止をしている。
それなのにこの女は動いていた。
私は取り敢えず思ったのは
「殺そ!」
だったので一気に走ってギミック入りの武器で攻撃をした。
グシャン!!
女はたちまち切り刻まれて死んだ。
私は
「なんだあ! 良かった! 弱くて!」
「そうだね、攻撃するつもりなんてなかったから別に大丈夫だよ?」
「!!」
殺したはずの女の声がした。
私は声のする方を見ると女は普通に立っていた。
女はそこで死んでいるはずなのに生きている。
死体はまだある。
なのに生きている。
一体何なのか分からなかった。
偽物だと思い死体に触れると
「うわ……血が普通にあるんだけど……」
血はちゃんと手に着いた。
女は身代わりでも作ったのかな?
女は言った。
「私貴方と同じデマフォス様の力を貰った人間だよ、貴方を勧誘しに来たよ」
「は? 勧誘? 何の?」
女はニヤリと笑いながら
「暗殺者しない?」
「なんで? 私は芸術家なの、それなのに選んだ人間のみを殺すなんていや! 私は私の欲のみで行動するの!」
「でも作品の場所がもうないんでしょ?」
「それは……何とかするけど」
「何とかって? どうやって? 時間を止めて穴でも掘る? 無理よ、あなた一人で出来ないわ、途中でミスって埋まるのがオチよ、それにそんなに時間をかけて衝動が抑えられるの?」
「それはああ……」
「ならばこっちに来なさい、それに、依頼を受けるのも一つの勉強よ、今まで好き放題に殺してきて相手の事情までは知らないでしょ? 調べて殺したことある?」
「いや……まあ多少は?」
「多少って?」
「私が見た限りの?」
「時間停止を使って徹底的に調べて?」
「いや、徹底的には調べてないけど」
「内なら殺すと同時に調べた情報を聞くことが出来るわ、内は情報係がいてその子は優秀なの、全てを見てきたように情報が分かるわよ、そうすれば貴方はより確実に絶望を味合わせることが出来るんじゃないの? 全てを奪った後の絶望もより短縮して手に入るわよ? 芸術を完成させるのに色々と役に立つわよ?」
その言葉を聞いて私は少しワクワクしたが一つ気になった。
「場所の提供は何処にあるの? それも情報係?」
「そうね、あそこなら一生分入るんじゃない? 大丈夫のはずよ」
と言って笑っていた。
私は不審にも思ったが何故か少し信用したいと思った。
何故か分からないがこの女の感じは昔感じたこの人の言う事なら聞いてみたいみたいな何かそんな誘惑が放たれていた。
「なんだったっけ?」
「うん? どうした?」
「何でも」
その後時を止めたまま出掛けた。
そして、その女の名前がアメナガスという自己紹介を聞いてある場所へと着いた。
そこは古びた家であり、国から離れた森の中であった。
そこは国の者も他の国からも疎まれていた入ったら出て来れないで有名であった。
すると女は奥へ進む。
私は何となく
「どうしてこの森を迷わず進めるの? 知ってる場所なの?」
と聞くとアメナガスは
「そうね、私はこの場所は良く知ってるわよ」
と言ってそのまま進んで行った。
そして、家に入ると
「ここの地下を使えば大丈夫だ、そして、この広さなら問題はない」
と言って洞窟の様な広さの部屋だった。
こんな部屋をどうやって作れるのか
国の中ならばきっとこの大きな広さを持つことは出来ないだろう。
外だからこそ出来る広い部屋。
私は
「この部屋はどうやって準備したの?」
「この部屋は王族がもう使わなくなったいわば隠れ家だ」
「だったら王族が使うんじゃ」
「もうこれを使う者はいない、王族が交代したのは知らないのか?」
「知らない」
「そうか、でも今の王族はこの隠れ家を知らない、だからこの場所は誰からも知られることはもう出来ないんだ」
「だったらどうしてアメナガスはここの事を知ってるの?」
「情報係が優秀って言ったろ?」
それを聞いて私は使って良いのかと取り敢えずは納得した。
私としては場所の提供が出来れば文句はない。
するとアメナガスは
「これからまた仲間を勧誘する、そいつの力を使えばもっといい場所が手に入るだろうしお前とも仲良くできるかもな」
「そうなの?」
「そうそう、……もう飾るのか?」
「昨日の人の表情も飾りたいから」
そんな会話をしていると
「アメナガス、首切り女を勧誘……出来たみたいだな」
とドン引きしながら私を見る女がいた。
アメナガスは
「ナリアか、ノリアは?」
「上で待ってる、他の勧誘も見つけたか?」
「今日犯行が上がる」
「そうか」
私はその言葉を聞いて
「私と同じ殺人鬼?」
「そうだ」
そう聞いて私は
(ああ、そうなんだ)
あまり期待はしなかった。