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依頼1『二人の転生勇者』

岡本(おかもと) 啓示(けいじ)は、一般的な高校1年生だ。


「おい! 岡本! 一緒にカラオケ行こうぜ!!」


と友人の1人が肩を叩いて誘った。

啓示は申し訳なさそうに


「すまない、ちょっと届けないといけない書類があってさ!」

「また生徒会長のとこかよ!! お前ら付き合ってんのか?」

「はあ、違うよ……ただの幼馴染だよ……」


友人は羨ましそうにしているが、啓示は溜息を吐きながらもすぐに否定した。


「そう……まあ俺には高嶺の花だからいいんだけどさ、じゃ俺らは行くんで! さいなら!!」


そのまま他の友人と一緒に啓示に手を振りながら教室を出た。

啓示は書類を持って


「さてと、僕もこの書類届けるか」


と言って生徒会室へと向かった。


「失礼します、書類を届けに来ました」

「おお! 啓示! いつもありがとう!」

「いつも僕に頼むのやめてくれない? 生徒会長……」


と言って苦笑していた。

彼女の名前は北島(きたじま) (まい)で啓示の2つ上の高校3年生、父親が武術をしていてそこの一人娘であった。

彼女は北場高校の生徒会長をしていて、皆の憧れの的であった。

その為よく幼馴染である啓示は嫉妬の目線を向けられることもあった。

ちなみに啓示は生徒会の者ではなかった。

すると


「また来てたのか、君は……ここは遊び場じゃないぞ」


と1人の男子生徒が嫌悪の表情で肩を掴み言った。

彼の名前は中島(なかじま) (しゅん)副会長だ。

すると舞は


「副会長、彼にお願い事をしたのは私だ、そんな言い方しなくてもいいだろ……」


と呆れながら瞬にちゅういした。

瞬は焦ったように


「しかし!!」


と反論しようとしたが、


「くどいぞ!」


舞に睨まれて黙らされてしまった。

瞬は気まずそうにしながら


「!! ……分かりました、後こちら学園祭に行う予定の書類ですので」


と言って持っていた書類を舞に渡した。


「ありがとう、啓示ありがとうもう帰って貰っていいぞ」


そう言われて啓示は呆れながらも


「分かったよ、じゃあね舞」


と言って帰ろうとしたら


「おい!! 生徒会長とお呼びしろ!!」


と瞬は怒りを込めて啓示を怒鳴った。

それを聞いて啓示は


「分かりました、お先に生徒会長」


と言って帰って行った。


「糞……」

「どうした?」

「別に……」


そう言って瞬は不満そうにしながら席に着いた。

そして、瞬は


「会長……どうしてあんな奴と仲良くするんですか……」


苛立ちながら舞に質問する。

それを聞いて舞は


「?? 幼馴染だから?」


とキョトンとしながら答える。


「そうですか……ならいいんですけど……」


と不貞腐れながら言った。

そして、舞は呆れながらも


「取り敢えず仕事をするぞ」


と言って目の前の仕事に取り掛かった。


数時間後


辺りはすっかり夜になっていた。


「ふー、結局この時間になってしまったな」


と言って少し疲れながら伸びをしていた。

その時、瞬は緊張しながら


「あの、会長……少しお話が……」


と少し顔を赤くしながら舞の方を向いた。

すると


ブーブーブー


と舞の携帯が鳴った。


「ちょっと待ってくれ、……啓示からか……」


と言って携帯を取った。

その姿を見て瞬は顔が険しくなった。


「もしもし、啓示? ああ、お母さんが? 分かった今日は遅くなったけど今から帰るってことを伝えてくれ、ああじゃあ!」


と啓示に伝言を頼んで電話を切った。

すると瞬は握り拳を作りながら悔しそうに


「どうして……あいつと連絡先交換してるんですか……」


と少し睨みながら言った。

それに対して舞は


「いや、あいつの家は私の近くだし親同士も仲が良いから連絡を取ることがあるんだ、お母さん私の携帯番号から掛ければいいのによく啓示の方に連絡するから」


普通の表情でその質問に答える。

イライラしながらも瞬は真剣な表情で


「そうですか……なら話をしてもいいですか?」


と先程の話に戻そうとする。

舞は携帯をカバンに入れて


「ああ、構わない」


と言って瞬に向き合う。

そして瞬は


「好きです! 付き合って下さい!」


と告白した。


「……」


少しの間舞は呆気にとられて時間が流れた。


「!」


ハッとなった舞は


「ごめん、無理だ」


と断った。


「どうしてですか……」


と涙を流しながら悔しそうに瞬は聞いた。

舞は申し訳なさそうに


「今は君に対してそういう思いになれないんだ……すまないな」


と言って告白を断る。

すると瞬は人が変わったように


バンバン!!


と机を蹴りながら


「嘘だ!! 嘘だあああ!! あいつだろ!! どうせあいつなんだろ!!」


と喚き始める。

舞は慌てながら


「お! おい! どうした!! 落ち着け!」


と諭すが全く気にも留めずに瞬は


「岡本なんだろ!! あいつがいるから俺は!! 俺の告白は遊びなんかじゃない!! それなのに!! あいつのせいでえええええええ!!」


と激昂していた。

それを聞いて舞は瞬を落ち着かせようと


「ちょっと待て!! 何で啓示が出てくるんだ!! 関係ないだろ!!」


話し掛けるが、瞬はそんなことは聞かずに


「糞おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


と大声を上げながら


バン!!


と生徒会室のドアを叩きつけるようにあけて走っていってしまった。


「ちょっと待て!! おい!!」


と手を伸ばして舞は止めようとしたがそのまま瞬は走り去ってしまった。

舞の体は震えだした。


「何か嫌な予感がする……あいつに電話しないと!」


と言って携帯を操作して啓示に電話を掛けるが


『御掛けになった電話番号は現在繋がりません』


とコールが鳴る。

舞は真っ青になりながら


「どうして繋がらないんだ!!」


と言って携帯を鞄にしまって生徒会室を出て走って行った。


------------------------------------------------------------------------------------------


「はあ、まさか頼まれた買い物に電池を書き忘れてるなんて……ついてない……」


溜息を吐きながら歩いていた。


「まあ、コンビニ近いからいいんだけど……帰りにアイスでも買うか……」


と自分に少し希望を与えてやる気を出す。

すると後ろから


「ここにいたのか……」


と声が聞こえてきた。


「??」


啓示は声のした方を見ると


「あれ? 副会長?」


そこには生徒会副会長の瞬がいた。

啓示は


「どうしたんですか? こんな夜に……」


と不思議そうに瞬を見て聞くと


「黙れえええええええええええええ!!」


と突然啓示に怒鳴った。


「!!」


ビクッと啓示はしてたじろぐ。

すると瞬は


ギリギリ


と歯ぎしりをしながら


「俺は振られたんだぞ……」


と睨みながら啓示に話す。

啓示はキョトンとしながらも気まずそうに


「えっと……お気の毒に……どなたにですか?」

「会長にだ!!」

「!! そっそうですか……」


と更に気まずそうに答える事しか出来なかった。

啓示はこのままではいけないと思いすぐに励まそうと


「だっ大丈夫ですよ!! 会長も今は忙しいだけで余裕が出たらきっと!!」


言葉を掛けてあげるが、瞬は震えながら


「嫌味か……」


と俯きながらボソっと言葉を出す。

それを聞いて戸惑いながら啓示は


「ドっどういうことですか?」


と少し震えながら聞くと


「お前が俺の会長を奪ったんだろうが!!! 俺が好きなのを知っていてずっとバカにしてたんだろ!!!」


と睨みがら激昂する。

それを聞いて啓示は唖然となった。


「いや……僕と舞はただの幼馴染で……」

「気安く名前を呼びやがって!!」


と自分と舞の関係について訂正しようとするが、瞬は聞く耳を持たず怒鳴る。

怒りで震える瞬は手をポケットに突っ込み


「お前のせいで……お前のせいで……」


と言ながらナイフを握り締めて取り出す。


「ちょ! ちょっと!! ちょっと待って!! 何を考えてるんですか!!」


啓示は真っ青になりながら瞬を止めようとするが


「黙れええええええええええエエエエエエエエエエエエエエ!! バカにしやがって! 俺をバカにしやがって!! お前さえいなければ!!」


全く聞こうとせずにそのまま啓示にナイフを向ける。

そして、両手でナイフの柄を持つと


「死ねええええええええええええええええええええええええええええ!!」


と叫びながら啓示に向かって一直線に走り出した。


「うわ!! ああああああああああああああああああああああああ!!」


と咄嗟の事と恐怖で怯んだ啓示は逃げることも出来ずにその場で固まりながら腕で顔を隠した。

その時だった。


ドン!


と啓示は何者かに突き飛ばされた。


「うわあ!!」


ズサア!!


と右側に啓示は倒れ込んだ。


ザス!!


「うう!!」


と鈍い音が鳴ったと思った瞬間


「!! ドっどうして……」


と瞬が声を震わせながら泣いていた。

啓示が見るとそこには瞬に刺された舞が立っていた。


「舞!!」


と言って舞いの元へと駆け寄る。


「ちっ違う……俺は……俺は……」


瞬は後退りしながらナイフを引き抜く。

啓示は


「大丈夫か!! 今!! 今救急車を!!」


と言って携帯を出して電話しようとするが


「ドっどうして!! 何で充電が切れてるんだ!!」


と充電の斬れた携帯を怒りに任せて


バン!!


と叩きつけた。

破片が飛び散りながらも携帯はどこかへ滑っていった。


「どっどうしよ!!! 副会長!! 電話を! 今ならまだ間に」

「お前のせいだ……」


恐怖で声を震わせながら瞬は


ゴス!


と何かで啓示の後頭部を殴った。


「うう!!」


すると頭に激痛が走った。

そして、目の前がグニャグニャに曲がり始めて


「い……たい……あにが」


と言いながら頭から血を流して舞に乗りかかるように倒れた。


「俺のせいじゃない……こいつが……こいつのせいで……お前のせいで会長を殺してしまったんだ……ああ……あ」


真っ青になりながら瞬は


ボトン


と大きな石ブロックを落した。

そして


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


と悲鳴を上げながらその場を逃げた。

その後、なかなか帰ってこない啓示と舞を探すために辺りを捜索していた家族が見つけて救急車を呼んだ。

が、間に合わずに2人の若くて尊い命は失われた。

そして、すぐに瞬が犯人だと分かり警察に逮捕された。


-----------------------------------------------------------------------------------


暗い……

もう痛くはない……

苦しくもない……


一体何が……


『め……め……よ』



何が声がする。

何か聞こえる。

どんどんと目の前が明るくなってきている。

一体何……

目……が少しずつ見えるように……


そして、啓示の目の前が見えるようになった。

そして


「こ……こは」


と言って目を凝らすと目の前に舞がいた。

自分が舞にのしかかるように寝ていた。


「うわああ!!」


とびっくりして飛びのいた。

すると


「うう……うう」


と舞も目を覚ましたようだった。

舞は目をゆっくりと開きながら


「ここは……いったい……」


と言って辺りを見渡した。

そこは空の上にいるような場所だった。


「……本当にここはどこだ?」

「さっさあ……」


と二人は話し合っていると


「どうやらようやく目が覚めたようですね」


近くからする声の方を見るとそこには光り輝いて何者かすら分からない者が立っていた。

それを見て舞は


「えっと……もしかして私たちは死んでます? 刺された実感といい、この空間といい」


と戸惑いながら舞は状況を確認すると目の前の人物は


「そうですね、あなた方は死にましたよ」


と当たり前の様に答えた。


「ということはあなたは神様ですか?」


と啓示が確認すると


「そうですね、私はあなた方のいうところの神様だ」


とまたも当然の様に答えた。

舞は緊張しながら


「つまり、私たちは今最後の審判に立たされているんでしょうか?」


と恐る恐る質問すると

すると神は笑いながら


「安心してくれ、あなた方は確実に天国行きだ、それに北島さん、あなたが行った最後の行いは凄く素晴らしい事だ」


舞が死ぬ直前の行動を称え始める。

舞は申し訳なさそうにしながら


「そんな……私のせいで啓示を巻き込んだのです! あれは私の責任です!」


と神様に進言する。

それに対して啓示は慌てながら


「僕だって!! もっと力があれば舞に心配かけなくて済んだんです!! それに幼馴染とはいえ誤解されるようなことをしなければ!」


と言ってお互いに庇い合った。

すると神様は


「素晴らしい!! あなた方はお互いに罪をなすり着けようとしないとは!! たいていの人間は互いに罪を着せて自分たちを正当化しようと目論む者が多いのにあなた方はそんなくだらないことをしようとしなかった!! だからこそ! 私はあなた方に頼みたいことがあるのだ!」


と嬉しそうにしながら神様は二人に近づく。

それを聞いて2人は


「私たちに……頼みたい事ですか?」

「何でしょうか?」


と不安そうに聞いた。

神様は少し俯きながら


「実はな、私が作った世界の1つで魔王が復活してしまったんだ、昔人間たちが封印した魔王が……それを私もどうにかしたいんだが当然私自らが行く訳にもいかない!」


と言って理由を伝え始めた。

そして、真っ直ぐ二人を見て神様は


「そして君たちにはその魔王を倒すためにその世界に転生して欲しい! 当然君たちが倒せるように奇跡の力を渡すつもりだ!」


と交渉を始めた。

二人は先程の話を確認するように


「えっと……つまり異世界に転生して僕らに魔王を倒して欲しいと言うことですか?」

「その為の準備として神様の奇跡を授けてくれると……」


と二人は神様に確認すると


「そうですね、君たちの世界で言うところの異世界転生と俺Tueeですね」

「それを言ってしまいますか……」


とその言葉に舞が苦笑いをした。

そして、神様は


「取り敢えず君たちを魔王から一番遠い場所に転生させようと思う、その記憶もそのままで姿もそのままでね、出来るだけ早く対応したい」


と転生後のスタートの説明をした。

そして、神様は不安そうに


「と言っても君たちがそれを承諾してくれたらの話なんですが……どうだ? 頼めるか?」


と二人に確認をする。

すると二人は笑顔で


「「分かりました、いいですよ」」

「! 本当にいいのか?」


と2人の答えを聞いた神様は驚きながら聞いた。

すると


「正直僕も死んでしまってまだ生きて何かをしたいという思いがあります、僕は何も出来ずに死んでしまったので……」

「私も学生で死んでしまって少し後悔があるので、何が自分に出来ることをしてこの思いをスッキリさせたいです!」


と言って二人は承諾した。

神様は嬉しそうにしながらも冷静になって


「よろしい、ならば君たちには1つのスキルを渡そう、それは見た者を即死させることが出来る能力だ、だが魔王は即死させても聖剣で完全に消滅させないといけないか、もしくは悪魔の魔剣で刺して消滅させないと再び復活してしまうのだ、魔剣は悪魔の剣だからそれは使うべきではないし、そもそも魔剣は悪魔からの賜物だから使われることはないんだが、だから君達はまず聖剣を引っこ抜いてから冒険に出てもらいたいんだ、」


と魔王を倒すための説明をする。

それを聞いて


「魔剣を誰かが手に入れることは?」


と啓示は神様に質問をすると


「それはないはずだ……悪魔と契約してかなり信頼を手に入れないとその剣は貰うことが出来ない、そして、その剣を使って殺せば結局魔王が変わるだけで何の解決にもならないことぐらいはこの世界の人間も分かってることだろうし……」


と神様はその質問に答える。

二人はその説明を聞いて


「分かりました」

「はい! 任せてください!」


と当然の様に承諾した。

すると舞は


「神様、すみませんが私は即死スキルは使わないようにしたいんですが、武道家の娘としてあまりそういう簡単な手で倒してしまうのはプライドに触ってしますので」


と言って最初にスキルを使わないことを言った。

すると神様は


「ハハハ、現世を見ていたけど君らしいね、一応は渡すが使うかどうかは君達の裁量で決めてくれてもいい、でも聖剣で消滅させないといけないので聖剣で倒すことはしてくれ、どちらが使うかは任せるけど」


と笑うながら神様は話す。

そして、神様は二人に真剣に


「では、今丁度召喚の儀式を行ってるからそこに降ろします! 君たちの健闘を祈っているよ! 頑張って来てくれ!」

「「はい!!」」


そう言って2人は転生された。

その後神様は言った。


「決してあの者達の魔剣では消滅させてはいけない、奇跡で倒してこそ平和は保たれるのだ、決して邪悪を持って倒してはならない、王が早まってしまったのは私の責任だ……あのドス黒い邪悪な魂の者達の報酬も叶えてはいけないのだ……だから……頼んだぞ、2人共」


と言って願っていた。

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