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JKなのに乙女ゲーの皇子様に転生しました  作者: 涼瑚
第一章、転生先の環境改善
2/20

2、何事にも対策と情報収集は必須である

ブックマークして下さった方、ありがとうございます!

 さて、おはようございます。ジュエリー帝国第一王子、クラウス・ダイヤモンドこと桜井かなでです。さて、楽しい楽しい異世界生活二日目の始まり始まり~(パチパチパチ)


 …失礼。どうもこの非科学的現象が夢ではなかったという絶望感と昨夜遅くまで破滅ルート回避の対策を練っていたための寝不足からテンションが異常になっているらしい。


 さて。脱線はこれくらいにして、昨夜たてた対策を整理しよう。


 まず、弟に害をなすことによる破滅は、こちらから何もしないことが対策となるだろう。だが、ゲームのバグ修正機能的なもので誤算が生じる可能性もあるので、何らかの手を打っておく必要がある。


 そこで、まずは「弟と仲良くする」ことからはじめ、「弟を通して友人を作る」を目標にする。まあバグ修正機能で記憶まで改竄されてしまえばそれまでだが、今は他に出来ることがない。あとは「外国にいざというときに逃げ込む場所を用意する」も考えたのだが、現段階ではかなり困難だ。


 また、他の登場人物と邂逅(かいこう)するタイミングもわからない。「クラウス」の記憶に従うと、フィリップやルーファスはおろか、弟とさえも面識がないのである。ので、この計画は彼らと知り合い次第試行する予定である。


 次に、エイレンとの結婚への対策は、私が彼女に構わなければいい話なので、楽なものだ。


 …よし、これでいこう。粗雑極まる、かつ穴だらけの作戦だが、綿密に立てすぎて予想外の出来事に振り回されるよりかはましだと思う。


 決意(?)を固めた私は、ぽすんと座っていたソファーに体を投げ出した。ああ、頭を使うと疲れるなぁ…


 ふかふかのクッションから程よいスプリング、カバーの手触り等、高級感溢れるこれは、前世ではついぞお目にかからなかった物。これが二歳児の「私物」なのだから皇室とはとんでもない場所である。


 そういえば今までそれどころじゃなかったから気付かなかったけど、私に与えられている「自室」はかなり豪華である。幾つかの部屋が扉で繋がっていて、一番手前がソファーとローテーブルのある「応接間」、その次が勉強用の机と椅子がある「勉強部屋」、さらにベッドルームにバスタブつきのシャワールームと、玩具やら絵本やらが置いてある「リビングルーム」と、さすが王子様、という徹底ぶり。


 因みに今私がいるのは、リビングルームだ。床には毛足の長い絨毯がひかれ、転んでも怪我をしないようにされている。そして壁には大きな鏡が……え?ああ、そっか。


 起き上がり、振り返って向き合う形になった鏡にうつりこんだ光景に、思わず驚く。そこにいるのは当たり前だがどこにでもいそうな女子高生、ではなく、とても綺麗な少年。そういえばこうして「こっち」の顔をゆっくりと眺めるのは初めての事だった。


 西洋人だということを差し引いても長いまつげ。ぷるっとしたコーラルレッドの唇。すっととおってかつ高すぎず、低すぎない調度良い高さの鼻。それらが絶妙な黄金比を造り出しているのはまさに芸術。


 もともと、綺麗なのは知っていた。まあ恋愛ゲームの攻略対象になるくらいだし、何回かだが、ゲームでイラストを見たことはあった。でも。でもこれは。


  規 格 外 だ


 うん、完っ全に規格外。あれだよあれ、「美の女神の寵愛を一身に受けた」とか評されるレベルの美貌。


 っと、そんなことはこの際どうでもいい。しかしここまでの美少年ぶりでは、将来どんな顔になるのか非常に楽しみである。(前)世の中の恋愛ゲームのヒロイン達はこんなイケメンどもに囲まれていたわけか。小、中はぼっち、高校は女子高だった私からすれば羨ましい限り。


 そしてそんなこともどうでもいい。今の私にはするべきことがある。


 先程までで、一応今後の方針はたったものの、「できることはするべきだ」と宣ったばかりだし、情報収集くらいはしてみるべきだろう。


 情報収集と言えば図書室。信頼性のある資料を探すのには一番の場所だ。頭の中の宮殿の地図を見かえし、図書室の位置を思い出す。どうやらここからそう遠くない場所のようなので、さっそくいってみることにしよう。




 目的地に到着し、まずは戸籍関連の資料を探す。司書に頼んで目ぼしいものを幾つか取ってもらうと、閲覧用の椅子に座って開く。


 さすがは宮殿の図書室である。皇室の系図だけでなく外戚関係図、主な貴族の家系図まで揃っているとは。お陰でどこの家がどれ程王家に近く、どんな特色があるのかがよく分かる。


 これによれば、私の母、つまり現皇后は名門貴族であるラピスラズリ家の長女として産まれている。系図をたどってみると、過去の皇后のうちの半数弱がラピスラズリ家の出身だということがわかる。ここから鑑みるに、それなりの、場合によっては最大の有力貴族である可能性がある。


 また、アレクシスの母親はガーネット家の出身とあったので、アレクシスとルーファスが親戚関係にあることがわかった。しかし、ガーネット家出身の皇妃は極端に少なく、皇后に至っては両手で数えてもおつりがきそうだ。理由はわからないが、これは調べてみると面白いかもしれない。


 しかしアレクシスがガーネット家の血を引いているとなると、彼が弓術に秀でていたことの説明がつく。ガーネット家は当主が元帥、その弟が近衛騎士団長と軍人気質のようで、それはルーファスのような性格が出来上がるだろう、と納得がいく。ゲーム設定中のアレクシスは積極的で細かいことに拘らないところがどことなくルーファスに似ていると思っていたが、なるほどこういうことだったのか。


 そういえば、クラウスとアレクシスの対照的な性格は前世の妹と私のそれによく似ている。私は小、中、高と室内派で、本、それも太宰治やら夏目漱石といった文学史や歴史小説、SF、戦争ものなどとおよそ同世代の女子達とは合わない趣味をしていたのだが、同じ両親から生まれてきたハズの妹は、乙女ゲームや少女漫画、恋愛物のラノベが大好きという徹底した「女子」っぽさで、当然友人も多かった。


 他にも色々と見てみたかったのだが、その前にジュリアー私付きの侍女ーが夕食を知らせに来たので、おとなしく食堂に向かうことにした。


 今朝までは病み上がりという事で消化のいいお粥等だったのだが、図書室に午前中一杯閉じ籠れる位には元気であることがわかったからか、昼食はしっかり目のコース料理であった。


「クラウス、図書室に行っていたというのは本当か?」


 上座に座る父、カールハインツが不意に話しかけてきたので、取り敢えず差し当たりの無い返答をする。


「あ、はい。父上の後継者として自国について学ぶのは当然でございますから」


 実の父親とはいえ相手は皇帝だ。言葉遣いには気を付ける。まあ親なんてものは「学ぶ」だの「勉強」だのと言っておけば煩くならないので、テンプレに従えば波風は立つまい。


「そ、そうか。良い心掛けだな。…にしても我が息子ながらしっかりしている。今後とも勉学に励みなさい」


「はい」


 ほら、やはり子供が勉強しているのを喜ばない親はいない。


 ところで先述したように私は読書が好きだ。三度の飯や、下手をすれば睡眠よりも好きだ。前世ではそれが行き過ぎて、読書禁止を言い渡される程に。だがこちらでは「王子教育」的な物はまだ始まっていないようで、つまりは好きなだけ読書していいということだ。


 先程は入り口と閲覧室にしか行っていないので、図書室にどんな書物がどれくらいあるのかはわからないが、ぱっと見た部屋の大きさの感じではとんでもない量がありそうだった。これからが楽しみで仕方ない。

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